分析的手続ツール: イギリス | ciferi
イギリスの監査に従事する公認会計士向けの、監基報520(分析的手続)に準拠した分析的手続ツール。FRC(Financial Reporting Council)の監査品質レビュー期待値に適合した設定。 監基報520と適用範囲...
はじめに
イギリスの監査に従事する公認会計士向けの、監基報520(分析的手続)に準拠した分析的手続ツール。FRC(Financial Reporting Council)の監査品質レビュー期待値に適合した設定。
監基報520と適用範囲
監基報520は、分析的手続の設計、実施、評価に関する要件を定めている。IASBが発行した基本的なISA 520と実質的に同一だが、イギリス監査環境に固有の適用や、FRCの検査テーマを反映した実務慣行がある。Brexit後、イギリスはISA準拠の監査基準を維持しながら、FRCが独立して基準を改定する権限を確保している。
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イギリス監査における分析的手続の枠組み
監基報520の要件
監基報520パラ4は、監査人が実証手続として分析的手続を設計・実施する場合に、以下を行うよう要求している。
(1)当該アサーション(主張)に対して、分析的手続が適切であるか判断する。
(2)計上額または比率の推定に使用するデータの信頼性を評価する。データソースの独立性、比較可能性、作成に係る内部統制を考慮する。
(3)推定値が、個別または集計して重要な虚偽表示を識別するに足りる精度であるか評価する。
(4)計上額と推定値の差異のうち、許容できる差異の金額を決定する。
FRCの検査テーマ
FRC監査品質レビューチーム(AQR)は、年1回、イギリスの大型監査法人および上場企業を監査する法人を検査している。近年の検査でAQRは、分析的手続を実施する品質に関する改善事項を繰り返し指摘してきた。
特に指摘される点は以下の通り。
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- 推定値の精度が不十分。企業全体で1つの売上推定を立てるのではなく、セグメント、製品ライン、地域別に分解して推定すべき
- 事後的に許容差異を決定する。監基報520パラ6では、推定値と計上額の差異が識別されたら、監査人が「調査する」と書かれているが、事前に許容差異を決定していない審査調書が多い
- 経営者の説明を受けるだけで、独立した裏付け証拠を入手していない
イギリス固有の監査環境
会計基準と報告枠組み
イギリス企業は、上場企業(IFRS)か非上場企業(FRS 102など国内基準)かで会計基準が異なる。分析的手続で使用するデータの比較可能性に影響する。
監査人は、期間比較と企業間比較の際に、会計基準の相違が分析的手続に与える影響を考慮する必要がある。
マクロ経済要因
イギリス経済に固有の要因。
これらはセクター別、地域別に異なる影響を与える。監査人は、被監査会社の事業と関連のある経済指標を収集し、推定値開発の根拠とすべき。
FRCの実務指針
FRC実務指針10「イギリス監査」は、監基報520の適用に関する補足ガイダンスを提供している。推定値開発に使用するデータは、可能な限り独立した情報源から取得し、推定方法は明確に文書化して、重要な虚偽表示を識別できる精度で設計すること。
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- IFRS採用企業:IFRS 16(リース)、IFRS 9(金融商品)等の適用により、非IFRS企業とは科目構成が大きく異なる
- FRS 102採用企業:認識・測定要件がIFRSと異なり、利益、資産、負債の構成が異なる可能性
- Brexitの影響:貿易量、サプライチェーン、在庫レベルの変動
- イングランド銀行の金利政策:借入コスト、消費者支出への影響
- ONS(Office for National Statistics)が公表する産業別統計
- CBI(Confederation of British Industry)のビジネス信頼感指数
検査指摘の傾向
FRCが公表した過去の検査報告書から、繰り返し指摘される事項。
推定値開発時の不備
精度の不足
調査の不備
完了段階の形式化
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- 推定値を計上額を見てから開発している
- 実績数字を見て、「これは許容差異内だ」と事後的に判断している
- 監基報520パラ6は、推定値と計上額の「差異が識別された」ら調査するとしているが、「差異が許容基準を超えたら調査する」と事前に基準を設定することが必須
- 粗い推定。前年度の金額に一般的なトレンドを乗じるだけ
- 企業固有の業務データを組み込んでいない
- 経営者準備データ(予算など)を検証せずに使用
- 経営者の説明を聞いて終わり
- 説明の妥当性を検証する独立した証拠を入手していない
- 差異の理由が複数ある可能性を検討していない
- 監基報520パラ2で要求される、監査完了段階の分析的手続が儀式的に実施されている
- 独立した推定値を開発せず、財務諸表の数字を眺めるだけ
- 監査証拠から得た知識と財務諸表の整合性を検討していない
実装上の指標
イギリス監査で使用する場合の設定ガイド。
許容差異の決定
監基報520パラ4(4)に従い、計上額と推定値の差異のうち許容できる金額を決定する。
例)マテリアリティ(全体)500万ポンド、パフォーマンス・マテリアリティ325万ポンド、許容差異は325万ポンドの5~10%(16~33万ポンド)。
推定の精度
精度は、識別対象の虚偽表示の大きさと検査期間の長さに応じて設定する。
データソースの評価
監基報520パラ4(2)に従い、使用するデータの信頼性を評価する。以下の独立したソースが好ましい。
経営者準備データ(予算、予測など)を使用する場合は、その準備過程の内部統制を評価する必要がある。
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- パフォーマンス・マテリアリティまたはそれを基準とした率
- 典型値:パフォーマンス・マテリアリティの5~10%
- 月次データ:上位レベルの推定でも許容される
- 全期間データ(年間):より精密な推定が必要
- 高リスク領域:より狭い許容差異
- 過去期間の監査済み財務諸表
- 企業の営業データ(生産数量、従業員数など)
- 契約書、注文書などの契約ベースのデータ
- 政府機関(ONS)、業界団体(CBI)が公表する統計