Definition

Pillar Twoは2021年にOECD包摂的枠組みで合意され、多国籍企業に対して15%の最低法人税率を適用する。

Key Takeaways

Pillar Twoは2021年にOECD包摂的枠組みで合意され、多国籍企業に対して15%の最低法人税率を適用する。
被監査会社の所属する国によって施行時期は異なり、準備不足のため引当金や税務開示に誤りが生じやすい。
監査人は法人税の計算根拠、GloBE規則の理解度、引当金の適切性を検査する際に特に留意する必要がある。

仕組み

Pillar Twoは「Global Base Erosion and Anti-Abuse Tax」(GloBE)規則として実装されている。この規則は、多国籍企業グループの実効税率が15%を下回る場合、その差分に相当する追加の税負担を課す。ただし、規則は複雑であり、各国の実装方法も異なっている。
監基報570では、継続企業の前提に関して経営者が十分に開示しているかを監査人は検査する。Pillar Twoの導入に伴い、被監査会社が新しい税務負担に対応できるキャッシュフローを有しているかの評価が重要になった。また、IAS 12では、繰延税資産と税引当金の測定において、適用すべき税率の特定を求めている。Pillar Twoの施行により適用税率が変動する場合、その影響額を正確に計算しなければならない。
多くの被監査会社は、Pillar Twoの詳細な要件をまだ完全には理解していない。特に、「不参加テスト」(Pillar Twoの適用外となる条件)や「導入支援ルール」(施行初期の緩和措置)の適用可否について、誤った判断をしているケースが見られる。監査人は経営者が適切に法的助言を得ているか、その相談内容が十分に文書化されているかを確認する必要がある。

計算例:ターゲーム・インベストメント・グループ

クライアント:日本の製造・販売会社、親会社はドイツで上場、2024年度売上は18億8000万円。
ステップ1:適用範囲の確認
グループ全体の売上が7億5000万ユーロを超えているため、Pillar Twoが適用される。ただし、日本国内での売上比率が小さいため、グループ全体の有効税率によっては追加の税務負担が発生する可能性がある。経営者に確認したところ、ドイツの親会社から税務影響の試算は届いていない。
文書化ノート:「Pillar Two適用確認シート」を確保。親会社からの通知の有無、試算資料の受け取り状況を記録。
ステップ2:グループの有効税率の確認
ドイツの親会社全体の有効税率は16.2%となっており、15%を上回っている。ただし、ベルギーの子会社(売上850万ユーロ)の有効税率が12.8%であることが判明。グループ全体ベースで再計算すると、有効税率は15.1%となり、わずかに15%を超える。
文書化ノート:「有効税率計算表」に、各国別の税負担額、売上構成比を記載。
ステップ3:引当金の必要性判断
現在のところ、追加的な税務負担(Pillar Twoの支払額)は発生しない見込みであるが、翌年度の事業計画では新たな事業投資が予定されており、グループの有効税率が低下する可能性がある。経営者に確認したところ、翌年度の税務影響についての試算は実施していない。
文書化ノート:「Pillar Two翌期見通し」を作成し、翌年度で引当金の必要性が生じる可能性がある旨を注記。
ステップ4:開示の確認
被監査会社は、個別財務諸表の脚注において「OECD Pillar Twoの施行により、グループ全体で追加的な法人税負担が生じる可能性がある」と開示している。ただし、具体的な試算額は示されていない。
文書化ノート:「税務開示チェックリスト」に、IAS 12.88の要件(税務上の不確定性)に基づき、引当金の必要性を評価した旨を記録。
結論:被監査会社のグループは現在のところPillar Twoに基づく追加税務負担の対象外であるが、翌年度の計画により引当金の必要性が生じる可能性がある。今期は十分な開示がなされており、継続企業の前提に対する影響は限定的と判断できる。

監査人が見落としやすい点

  • Tier 1(国際的な検査事例): 国際会計基準解釈委員会(IFRIC)は、Pillar Twoに関連する税務上の不確定性の会計処理について、IAS 37の引当金認識要件との関係を明確にする指針を公表していない。各国の規制当局は、Pillar Two施行の遅延や実装方法の相違に基づき、企業が十分な税務引当金を積んでいないケースを指摘している。
  • Tier 2(基準要件と実務上の誤り): IAS 12.88は、税務当局との争点がある場合、その不確定性に基づいて引当金を計上するよう要求している。多くの被監査会社は、Pillar Twoの詳細な施行規則が各国で確定していない現段階において、「施行が確定するまで引当金を計上する必要がない」と判断している。しかし、IAS 12の基準では、施行の確実性よりも、経営者が認識している法令要件(Pillar Twoの最低税率15%)に基づいた評価を求めている。
  • Tier 3(実務の記録ギャップ): 被監査会社の多くは、税理士への相談記録は存在するものの、その相談内容の範囲(GloBE規則の詳細な計算方法、各国における施行時期の確認)が不十分に文書化されている。また、親会社からグループ全体の税務影響に関する情報提供を受けていても、その信頼性を検証していないケースが見られる。

Pillar One との関係

Pillar Oneは、デジタル経済に関連する企業に対する課税権の再配分を定めるもので、Pillar Twoとは異なる規則である。Pillar Oneは売上基準による課税権の移転を目指しており、一部の大規模テクノロジー企業や消費財企業に影響を与える。Pillar Twoは法人税最低税率に基づくため、ほぼ全ての多国籍企業に関連する。監査人は、被監査会社がどちらのルールの対象であるか(あるいは両方か)を明確にしておく必要がある。

関連用語

  • 所得合算ルール(IIR):Pillar Twoの主要メカニズム。親会社所在国が子会社の低課税所得に対して追加税を徴収する
  • QDMTT:適格国内最低課税。低課税国が自国でトップアップ税を先取りし、IIRによる他国への税収流出を防ぐ仕組み
  • 軽課税利益ルール(UTPR):IIRが適用されない場合のバックストップ。関連企業の国で追加税を配分する
  • 繰延税金資産:Pillar Twoにより適用税率が変動する場合、繰延税金資産の再評価が必要になる
  • 継続企業:Pillar Twoの新たな税務負担がキャッシュフローに与える影響を評価する際の検討項目
  • 移転価格:Pillar Twoの実効税率計算では移転価格方針が各国の課税ベースに直接影響する

Pillar Two計算ツール

Ciferiの「Pillar Two税務負担試算ツール」を使用すると、グループの有効税率を自動計算し、追加的な税務負担額の概算を導出できます。多国籍企業グループの構成国、売上構成比、各国の法人税率を入力することで、数分で試算が完了します。

実務に役立つ監査の知見を毎週お届けします。

試験対策ではありません。監査を効率化する実践的な内容です。

290以上のガイドを公開20の無料ツール現役の監査人が構築

スパムはありません。私たちは監査人であり、マーケターではありません。