田中商事株式会社(売上高2,400億円、総合商社)での2024年3月期監査 統治責任者との協議では、資源事業への投資評価、長期工事契約の収益認識、関連会社投資の減損テスト、デリバティブ取引の時価評価について議論が行われた。これら4項目のうち、資源事業への投資評価と長期工事契約の収益認識をKAMとして選定した。 ステップ1. 統治責任者との協議事項を整理する 監査ファイルに協議議事録を綴じ、各事項について「注意を払った程度」を1-5のスケールで評価する ステップ2. 最も注意を払った事項を特定する 評価スケール4以上の事項を抽出し、監査時間の配分、実施した手続の複雑さ、利用した専門家の有無で優先順位を決定する ステップ3. KAMの記載内容を作成する 各KAMについて「なぜKAMか」「何をしたか」「財務諸表のどこに記載されているか」の3点を200-300語で記載する ステップ4. パートナー及び品質管理レビュー担当者の承認を得る 記載内容が被監査会社の機密情報を適切に保護しているかを確認し、監基報701.14の制約要件との整合性を検証する 最終的に2つのKAMが監査報告書に記載され、読み手にとって監査の焦点が明確になった。品質管理レビューでも記載内容の妥当性が確認された。

監基報701が求めるKAMの決定プロセス

KAMの識別基準


監基報701.9は、監査人にKAMの識別を求めている。識別プロセスは2段階で構成される。第1段階では、当期の財務諸表の監査において監査人が最も注意を払った事項を特定する。第2段階では、これらの事項のうち、統治責任者と協議した事項からKAMを選択する。
統治責任者との協議事項には、重要な虚偽表示のリスクが高い事項、監査人の重要な判断を伴う財務諸表上の領域、当期中に発生した重要な事象や取引、ISA 540(改訂).18に基づく会計上の見積りの不確実性が高い項目が含まれる。ただし、すべての協議事項がKAMになるわけではない。

記載が必要な3つの構成要素


監基報701.13は、各KAMについて以下の事項を監査報告書に記載することを求めている。
事項の概要: 当該事項が監査上の主要な事項である理由を含む記載。単なる会計方針の説明ではなく、なぜその事項に監査人が注意を払ったかを明確にする必要がある。
監査上の対応: 当該事項に対して監査人が実施した主要な監査手続の記載。検証した仮定、実施したテストの種類、利用した専門家について具体的に記載する。
財務諸表における取扱い: 関連する注記や会計方針への参照。読者が財務諸表でどの部分を確認すればよいかを明示する。

実務での適用例:架空の商社でのKAM記載

田中商事株式会社(売上高2,400億円、総合商社)での2024年3月期監査
統治責任者との協議では、資源事業への投資評価、長期工事契約の収益認識、関連会社投資の減損テスト、デリバティブ取引の時価評価について議論が行われた。これら4項目のうち、資源事業への投資評価と長期工事契約の収益認識をKAMとして選定した。
ステップ1. 統治責任者との協議事項を整理する
監査ファイルに協議議事録を綴じ、各事項について「注意を払った程度」を1-5のスケールで評価する
ステップ2. 最も注意を払った事項を特定する
評価スケール4以上の事項を抽出し、監査時間の配分、実施した手続の複雑さ、利用した専門家の有無で優先順位を決定する
ステップ3. KAMの記載内容を作成する
各KAMについて「なぜKAMか」「何をしたか」「財務諸表のどこに記載されているか」の3点を200-300語で記載する
ステップ4. パートナー及び品質管理レビュー担当者の承認を得る
記載内容が被監査会社の機密情報を適切に保護しているかを確認し、監基報701.14の制約要件との整合性を検証する
最終的に2つのKAMが監査報告書に記載され、読み手にとって監査の焦点が明確になった。品質管理レビューでも記載内容の妥当性が確認された。

KAM記載の実務チェックリスト

  • 統治責任者との協議議事録を作成し、協議した全ての重要事項を文書化する
  • 監基報701.9の識別基準に基づき、最も注意を払った事項を特定する
  • 選定した各KAMについて、3つの構成要素(概要、監査上の対応、財務諸表における取扱い)を記載する
  • 監基報701.14の制約要件を確認し、被監査会社の機密情報を適切に保護する
  • KAMの記載が監査意見の根拠を提供するものではなく、個別の監査意見を表明するものでもないことを確認する
  • パートナー及び品質管理レビュー担当者による記載内容の承認を得る

よくある記載不備

  • 事項の概要が単なる会計方針の説明になっている: 監査人がなぜその事項に注意を払ったかが不明確。リスクの性質や判断の困難さを明記する。
  • 監査上の対応が抽象的すぎる: 「十分かつ適切な監査証拠を入手した」といった一般論ではなく、実施した具体的なテストや検証した仮定を記載する。
  • 財務諸表の参照先が不正確: 関連する注記番号や会計方針の条項を正確に記載し、読者が該当箇所を特定できるようにする。
  • KAMと統治責任者への報告の不整合: ISA 701.8は統治責任者とのコミュニケーション事項からKAMを選択するよう求めている。監査役会に報告していない事項をKAMに記載すると、品質管理レビューで指摘される。

関連リソース

  • 監査報告書の文例集: KAMを含む監査報告書の標準文例
  • 統治責任者との協議議事録テンプレート: KAM識別に必要な協議内容の記録様式
  • 監基報701完全ガイド: KAMに関する基準要求事項の詳細解説

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