重要なポイント
- -44は構成要素の順序を規定し、意見を最初に配置することを求める
- 意見の文言は適正表示の枠組みか準拠性の枠組みかによって異なる
- 上場企業では に基づく監査上の主要な事項(KAM)の記載が必要
仕組み
ISA 700.43-44は監査報告書の構成要素の順序を規定している。最初に意見、次に意見の基礎、継続企業(ISA 570)、監査上の主要な事項(上場企業の場合)、経営者の責任、監査人の責任の順となる。強調事項やその他の事項の区分は、意見の基礎と責任区分の間に配置される。
意見の文言は適用される財務報告の枠組みによって異なる。IFRSのような適正表示の枠組みでは、ISA 700.25に基づき「真実かつ公正な概観を与えている」(give a true and fair view)と記載する。準拠性の枠組みでは、ISA 700.27に基づき「すべての重要な点において枠組みに準拠して作成されている」と記載する。誤った文言を使用すると報告書は基準に準拠しないものとなる。
無限定適正意見以外の場合、ISA 705が修正意見(限定付適正意見・不適正意見・意見不表明)の要件を規定する。各修正類型には固有の文言と「意見の基礎」区分における具体的な説明が求められる。
実務例:Da Silva Holdings NV
クライアント:オランダの持株会社、2024年度、連結売上高EUR 195百万、IFRS適用、ユーロネクスト・アムステルダム上場。
監査チームは監査報告書の作成にあたり、ISA 700.43-44に基づく構成要素の順序を確認した。上場企業であるため、ISA 701に基づく監査上の主要な事項(KAM)の記載が必要となる。
チームはKAMとして2項目を特定した。第一に、のれんEUR 18百万の減損テストにおける経営者の将来キャッシュフロー予測。第二に、子会社3社の連結範囲の判定(IFRS 10の支配要件の評価)。「ISA 701.13に基づくKAM選定:ガバナンス責任者に報告した事項のうち、当年度の監査において最も重要であった事項を選定。のれん減損テスト(経営者の仮定への依存度が高い)と連結範囲判定(IFRS 10の支配判定に重要な判断を要する)の2項目」と記録した。
意見の文言については、IFRS(適正表示の枠組み)を適用しているため、ISA 700.25の文言を使用した。「意見区分:連結財務諸表は、Da Silva Holdings NVグループの2024年12月31日現在の財政状態ならびに同日をもって終了する事業年度の経営成績およびキャッシュ・フローの状況を、国際財務報告基準に準拠して、すべての重要な点において適正に表示している」と起案した。
報告書の日付はISA 700.41に基づき、十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断した日付(2025年3月20日)とした。
結論:報告書の構成要素の順序・意見の文言・KAMの記載は、それぞれISA 700、ISA 700.25、ISA 701.13の要件に個別に対応する必要がある。枠組みの種類に応じた文言の選択は、報告書の基準準拠性を左右する根本的な判断となる。
よくある誤解
- 適正表示の枠組みと準拠性の枠組みで同じ意見文言を使う ISA 700.25は適正表示の枠組み(IFRS等)に対して「真実かつ公正な概観」、ISA 700.27は準拠性の枠組みに対して「枠組みに準拠して作成」と異なる文言を指定している。文言の選択誤りは報告書全体を非準拠にする。
- 構成要素の順序を変更する ISA 700.43-44は構成要素の順序を規定している。意見を最初に配置するのはISA 700の明示的要件であり、伝統的な順序(監査人の責任が先、意見が最後)は基準に準拠しない。
- 報告書の日付を経営者の承認日と混同する ISA 700.41は、十分かつ適切な監査証拠を入手したと監査人が判断した日を報告書日付とする。経営者が財務諸表を承認した日や取締役会の日付とは異なる場合がある。
- KAMの記載で手続の詳細を過度に開示する ISA 701.13は「最も重要であった事項」の記載を求めているが、監査手続のすべてを開示することは意図していない。守秘義務とのバランスを考慮し、事項の内容・監査上重要と判断した理由・対応した監査アプローチを簡潔に記載すべきである。