虚偽表示トラッキングツール:イギリス | ciferi

監査人は監基報450第5項に従い、監査の過程で識別した虚偽表示のすべてを累積しなければならない(明らかに僅少なものを除く)。イギリスの金融庁(FRC)による検査では、虚偽表示の評価が継続的に改善が必要な領域として指摘されている。FRCは、虚偽表示の集計だけでなく、個別性および質的な観点からの評価を期待し...

ツールの概要

監査人は監基報450第5項に従い、監査の過程で識別した虚偽表示のすべてを累積しなければならない(明らかに僅少なものを除く)。イギリスの金融庁(FRC)による検査では、虚偽表示の評価が継続的に改善が必要な領域として指摘されている。FRCは、虚偽表示の集計だけでなく、個別性および質的な観点からの評価を期待している。本ツールの出力は、監基報450第11項に基づく評価および第13項に基づく経営者への報告に直結する。

イギリス固有の規制環境

FRCの2023年度監査品質検査では、被監査会社の関心事業(PIE)監査の18%において、未修正虚偽表示の重要性評価が不十分であることが指摘された。具体的には以下の点が課題となっている。
また、FRCの重要性に関する主題別レビュー(2022年更新)では、実行重要性(パフォーマンス・マテリアリティ)が、予想される虚偽表示を踏まえて設定されていない事務所が多いことが指摘されている。実際の虚偽表示が実行重要性を超えた場合、監基報320第12項に基づいて監査手続を再評価する必要があるが、この再評価が行われていない例が散見される。

  • 未修正虚偽表示が個別に、または集計して重要であるかどうかの判定が、単なる定量的比較に留まっていた
  • 虚偽表示の質的性質(例えば、借入金の特約条項への影響や規制上の自己資本要件への影響)の検討が不十分だった
  • 未修正虚偽表示の集計が重要性の基準値に接近していても、監査手続の拡張が行われていなかった

イギリスの企業会計と虚偽表示の特性

イギリスの上場企業の大半はIAS 12(国際会計基準に基づく法人税会計)を適用しているが、中堅企業や非上場会社の一部はFRS 102(セクション29 法人税)に準拠している。この二層構造により、以下のような虚偽表示が頻出する。
資本手当(キャピタル・アローワンス)の処理: イギリスでは税務上の減価償却がなく、代わりに資本手当制度を適用する。プール単位で計算される税務簿価は、個別資産ベースの会計簿価と大きく異なることが多い。税務簿価の見誤りは、繰延税金資産または繰延税金負債に直結する虚偽表示となる。FRCの検査では、資本手当計算書をHMRC(イギリス租税庁)に提出した書類と照合せずに、経営者の見積りをそのまま受け入れた事例が指摘されている。
法人税率の変更: 2021年3月に法人税率が19%から25%(利益250万ポンド超)に段階的に引き上げられた。この変更に伴い、既存の繰延税金残高を新しい税率で再測定する必要があるが、再測定を行わず旧率のままだった例が多数指摘された。
銀行特別税: 利益が1億ポンドを超える銀行には3%の銀行特別税が課される。この場合、繰延税金資産負債は28%(25%の法人税率+3%の銀行特別税)で測定すべきだが、多くの銀行が25%のまま計上していた。

ツールの使用方法

入力データの準備

出力リスト


ツールの最終出力は、以下のセクションから構成される:
虚偽表示累積スケジュール: 個別に識別したすべての虚偽表示を、区分別に列挙する。明らかに僅少なものは別枠で管理し、メインの累積リストから除外される。
集計評価(監基報450第11項): 定量的評価として、未修正虚偽表示の集計額を全体的重要性と比較する。定性的評価として、以下の要素を記載する:
経営者への報告書(監基報450第13項): 各項目を個別に記載した未修正虚偽表示のリストを出力し、経営者確認書への添付用として使用する。

  • 重要性の基準値: 監基報320に基づき、あらかじめ全体的重要性(Materiality)、実行重要性(Performance Materiality)、明らかに僅少な虚偽表示の基準値を設定する。イギリスの中堅企業向けツール設定では、以下の初期値を想定している:全体的重要性 500,000ポンド、実行重要性 375,000ポンド、明らかに僅少な虚偽表示 25,000ポンド。
  • 虚偽表示の分類: 監査の過程で識別した虚偽表示を、以下の3区分に分けて記入する:
  • 事実上の虚偽表示:誤謬の有無に疑問の余地がないもの(例:勘定の二重計上、資産の過大評価)
  • 判断上の虚偽表示:経営者の見積りまたは会計方針選択が不適切と判断されるもの(例:回収不能債権引当金の過小、繰延税金資産の過大)
  • 推定虚偽表示:監査標本から抽出し、母集団に外挿したもの
  • 虚偽表示の発生原因と方向性(過大/過小、偶発的/意図的)
  • 主要業績指標(KPI)への影響
  • 借入金特約条項への影響
  • 利益の上下方向への一貫性