連結消去ツール:銀行・金融機関向け | ciferi
銀行と金融機関は、どの業界よりも大きな繰延税金資産・負債残高を抱えている。その原因は、期待信用損失(ECL)引当金と金融商品の公正価値変動にある。本ツールは、金融機関に特有の一時的差異を処理する。定義給付年金債務も対象。...
概要
銀行と金融機関は、どの業界よりも大きな繰延税金資産・負債残高を抱えている。その原因は、期待信用損失(ECL)引当金と金融商品の公正価値変動にある。本ツールは、金融機関に特有の一時的差異を処理する。定義給付年金債務も対象。
金融機関グループは、通常、複数の支店、子会社、および関連会社から構成される。連結財務諸表を作成する際、監基報310(注1)に基づき、全ての企業内取引、残高、収益、および費用を消去する必要がある。金融機関の場合、この消去作業は銀行以外の業界より複雑である。理由は、金融商品の測定と金融機関間の取引の性質にある。
(注1)監基報310は国際監査基準ISA 310に対応している。日本基準では監査基準報告書310「連結監査における監査人の責任」が関連する。
銀行・金融機関固有の連結消去項目
期待信用損失(ECL)引当金
IFRS 9(国際財務報告基準第9号「金融商品」)に基づく期待信用損失の計算では、企業内ローンや企業内貸付金の信用リスクを評価する必要がある。親会社が子会社に貸し付けたローンについて、子会社が信用リスクを示していなくても、連結ベースでは親会社と子会社は同一の経済主体である。したがって、企業内ローンに対して個別にECL引当金を計上することは不適切である。消去時に全額消去する。
金融商品の公正価値変動
子会社が親会社発行の債券を保有している場合、その債券の公正価値の変動は、連結財務諸表では消去する必要がある。親会社発行の債券が連結グループ内で保有されている場合、その保有は外部者との取引ではない。公正価値の変動は、グループ外部への売却時のみ実現する。
企業内取引に関連する消費税と利息
企業内ローンの利息収入(親会社側)と利息費用(子会社側)は全額消去する。ただし、その消去の影響は連結税金費用に反映される必要がある。企業内取引に課税される消費税についても同様である。
実務上の手順
ステップ1:企業内残高の特定と照合
まず、全ての企業内取引の残高を特定する。金融機関の場合、主な残高は以下の通り。
各企業から企業内残高の一覧表を取得する。その一覧表と相手先企業の帳簿を照合する。多くの場合、残高が一致しない。理由は、取引計上のタイミング差や、為替相場の変動による差異である。
ステップ2:期待信用損失の評価
IFRS 9.5.1.1に基づく3段階の分類を確認する。
ステップ3:公正価値の再評価
親会社または子会社が他方の発行する債券や優先株を保有している場合、その公正価値の変動を評価する。公正価値ヘッジや現金フローヘッジが適用されている場合、ヘッジ有効性の評価も連結レベルで再検討が必要。
ステップ4:為替差額の処理
複数通貨での企業内ローンについて、期末の為替相場で評価替えする。その為替差額は、IAS 21.32に基づき、純投資の一部であるか、通常の取引残高であるかで処理が異なる。純投資の一部である場合、その他包括利益に計上する。通常の残高の場合、損益に計上する。
ステップ5:消去仕訳の作成
全ての企業内取引を消去する仕訳を作成する。
企業内ローンの消去例:
親会社がA子会社に1,000万円のローンを提供している。A子会社が800万円返済済み。期末残高は200万円。
| 勘定科目 | 金額 | 摘要 |
|---------|------|------|
| 貸付金(親会社)削減 | 200万円 | 企業内ローンの消去 |
| 借入金(子会社)削減 | 200万円 | 企業内負債の消去 |
利息取引の消去例:
親会社が年3%の利息を計上。子会社も同額の利息費用を計上。利息収入20万円、利息費用20万円を全額消去。
ステップ6:定義給付年金債務の評価
子会社が定義給付年金制度を運営している場合、その債務を評価する。親会社と子会社で異なる割引率を使用していないか確認する。連結ベースでは、グループ全体で統一された割引率(または親会社の割引率)を適用することが望ましい。
- 企業内ローン残高(親会社から子会社、または逆)
- 企業内預金残高
- 企業内債券保有額
- 企業内保険取引に関連する残高
- ステージ1:信用リスクの増加なし 個別ECLを計上する企業内ローンは、連結ベースでは消去する。
- ステージ2:信用リスクの増加あり 子会社が財務困難に陥っている場合、その子会社への企業内ローンは減損評価が必要となる可能性がある。連結ベース、子会社が実質的に独立した経済主体であるかどうかを判断する。
- ステージ3:信用損失の客観的証拠あり デフォルトしている子会社への企業内ローンについては、個別減損を計上する必要があるか評価する。
公認会計士・監査審査会の関連指摘
金融機関の監査に関して、公認会計士・監査審査会(CPAAOB)は以下の点を重視している。
- 期待信用損失の計算における企業内ローンの扱い。子会社への貸付金に対して個別にECL引当金を計上し、その後連結時に全額消去する不十分な手続が見られる。連結スコープの段階で個別計上の必要性を事前に評価すべき。
- 為替相場の変動が大きい時期における企業内残高の為替差額処理。その他包括利益と損益への仕訳区分が明確でない場合がある。
- 企業内取引に関連する消費税の消去漏れ。企業内取引に課税される消費税を適切に消去していない例が報告されている。
チェックリスト:銀行・金融機関向け
実務で使用可能な確認項目。
- 全ての企業内ローン、預金、債券保有額を一覧化したか。各残高は相手先企業の帳簿と照合されたか。
- 企業内ローンについて、IFRS 9の3段階分類を再検討し、連結ベースでの個別計上の必要性を判断したか。
- 親会社または子会社が他方の発行する金融商品を保有している場合、その公正価値の変動を把握したか。
- 複数通貨での企業内残高について、期末レート での評価替え差額の処理方法を確認したか。
- 企業内利息取引について、収入と費用の消去仕訳が完全であるか確認したか。
- 定義給付年金債務について、割引率の統一性を確認したか。
- 企業内取引に課税された消費税について、消去処理が漏れていないか確認したか。
- 消去仕訳の全体が、監基報310の要件に基づき適切に文書化されているか。
関連する監査基準
- 監基報310:連結監査における監査人の責任
- 監基報550:関連当事者
- 監基報500:監査証拠
- 国際財務報告基準:IFRS 10(連結財務諸表)、IFRS 9(金融商品)、IAS 21(為替相場の変動の影響)
関連ツールとリソース
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- 連結消去ツール:一般版
- 連結消去ツール:製造業向け
- 連結消去ツール:小売業向け
- 監基報550対応:関連当事者取引の記録ツール
UI ラベル
- toolTitle: 連結消去ツール:銀行・金融機関向け
- heroSubtitle: 銀行と金融機関は、期待信用損失引当金と金融商品の公正価値変動により、どの業界よりも大きな繰延税金残高を抱えています。本ツールは、金融機関に特有の一時的差異を処理します。
- industrySelector: 業種を選択:銀行・金融機関
- countrySelector: 国を選択:日本
- defaultTaxRate: 法人税率(既定値):23.2%(日本)
- calculateButton: 計算する
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- intercompanyLoansLabel: 企業内ローン残高
- eclProvisionLabel: 期待信用損失引当金
- fairValueLabel: 公正価値変動
- pensionObligationLabel: 定義給付年金債務
- exchangeDifferenceLabel: 為替差額
- deferredTaxAssetLabel: 繰延税金資産
- deferredTaxLiabilityLabel: 繰延税金負債
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- helpIconLabel: ヘルプ
- documentationLink: 監基報310を参照
- relatedToolsTitle: 関連ツール