Definition

| 要素 | 絶対排出量目標 | 原単位目標 |

両者の比較表

| 要素 | 絶対排出量目標 | 原単位目標 |
|------|---------------|-----------|
| 測定対象 | 総排出量の削減(CO₂換算トン) | 売上高・生産量あたりの排出効率 |
| 適用場面 | 気候変動への直接的影響評価 | 効率性改善とベンチマーク比較 |
| 事業成長の影響 | 成長に関係なく削減が必要 | 成長しても効率向上で目標達成可能 |
| 規制上の位置づけ | SBTi、パリ協定と整合 | 業界比較とCSRD開示で重要 |
| 一般的な期間 | 2030年までに50%削減等 | 年間3〜5%の原単位改善等 |
| データ収集の複雑さ | 総量把握のみ | 売上・生産量との比率計算が必要 |

実務上での使い分け

CSRD第19条とESRS E1は、企業が設定する削減目標が科学に基づくものであることを求める。絶対排出量目標は1.5℃目標と直接的に整合するが、原単位目標は事業成長戦略との両立を図る際に使用される。
製造業では生産効率の改善を示すために原単位目標を採用することが多い。サービス業では売上高あたりの排出量削減を測定する。ただし、ESRS E1.4は絶対排出量での開示も並行して求めている。
金融機関の融資審査では、両方の目標設定状況を確認する。絶対排出量目標のない企業は気候変動リスクへの対応が不十分とみなされる場合がある。一方で、原単位目標は競合他社との比較や業界標準との乖離を把握するのに有効。

実例:田中工業株式会社(2024年度)

企業概要: 日本の自動車部品製造業、売上高280億円、CSRD適用対象(欧州子会社保有)
絶対排出量目標の設定:
文書化事項:SBTi認証取得済み、削減経路は1.5℃目標と整合
原単位目標の設定:
文書化事項:売上成長15%を考慮した効率性改善を評価
両目標の相互作用: 2024年は売上高が15%成長したが、原単位改善により絶対排出量の増加を10%の削減に転換。両目標の設定により事業成長と環境負荷削減を同時実現した。

  • 2019年基準年:65,000トンCO₂換算
  • 2030年目標:32,500トンCO₂換算(50%削減)
  • 2024年実績:58,500トンCO₂換算(10%削減)
  • 2019年基準年:売上高1億円あたり260トンCO₂換算
  • 2030年目標:売上高1億円あたり130トンCO₂換算(50%改善)
  • 2024年実績:売上高1億円あたり209トンCO₂換算(20%改善)

監査人と実務家が陥りがちな誤り

  • 絶対排出量と原単位の混同: ESRS E1の開示要求では両方が必要だが、一方のみを報告書に記載するケースがある。ESRS E1.4は明確に両方の開示を求めている。
  • 基準年の不整合: 絶対排出量目標と原単位目標で異なる基準年を設定し、比較可能性を損なう。GHGプロトコル7.1は同一基準年の使用を推奨している。
  • 事業成長の考慮不足: 原単位目標を設定したものの、急激な事業拡大により絶対排出量が大幅増加。投資家からの気候変動対応として不十分との評価を受けるリスクがある。
  • Scope 3の取扱い不統一: 絶対排出量目標にScope 3を含めるか否かで、開示される削減率が大幅に変わる。ESRS E1.30はバリューチェーン排出量の開示を求めているが、原単位目標の分母にScope 3を含めない企業が散見される。目標間の境界定義が統一されていなければ、開示全体の整合性が損なわれる。

関連用語

スコープ1排出量: 直接排出量の測定は両方の目標設定の基礎となる
スコープ2排出量: 電力消費による間接排出量、削減目標の主要構成要素
科学的根拠に基づく目標: 絶対排出量目標の設定で参照される1.5℃シナリオの枠組み
GHGプロトコル: 両目標の測定方法論を定める国際基準
ESRS E1: 削減目標の開示要求を定めるCSRD配下の基準
カーボンニュートラル: 絶対排出量目標の最終的な到達点として企業が設定

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