仕組み

ISA 550は、監査人に対し被監査会社の関連当事者を特定し、その取引がIFRSまたは適用されるGAAPに従って適切に開示されているかを評価するよう求めている。この評価は監査を通じた複数の段階で実施される必要がある。
計画段階では、監査人はISA 315.30(f)に基づき、関連当事者に関する情報を要求する。これには経営者から関連当事者の完全なリストを得ることが含まれる。しかし多くの場合、この初期リストは不完全である。監査人は取引データの分析、特に異常な仕訳や通常の営業活動と合致しない金額を検討する必要がある。
実施段階では、ISA 550.17から20が適用される。監査人は以下を実施する必要がある。(1) 重要な取引については対方の関連当事者ステータスを直接確認する、(2) 関連当事者取引に関連する契約書や合意書を検討する、(3) 期末後取引をレビューし、隠れた関連当事者取引がないかを検討する。期末後取引は特に重要である。なぜなら、期末の直前に関連当事者から金銭を借り入れ、期末後に返済するといった操作が可能だからである。
開示の評価はISA 550.21から22に記載されている。取引が関連当事者間で行われたかどうかは、経営者の意思や取引の経済的実質ではなく、法的支配構造によって判断される。もし被監査会社がある団体を支配していないが支配権を有していれば、その団体は関連当事者である。支配権の判定はIFRS 10の要件に従う。

実例:Moretti Costruzioni S.p.A.

クライアント:イタリアの建設会社、FY2024、売上€28M、IFRS報告。
ステップ1 - 関連当事者の識別
監査人は、経営者から関連当事者リストを要求した。リストには親会社M&C Holding S.p.A.および3つの子会社が含まれていた。しかし分析段階で、監査人は売上記録の中に「Innovatech Srl」との取引を発見した。€1.2Mの研究開発役務が提供されていた。
文書化ノート:関連当事者リストの確認。リスト外の取引の詳細を記録。
ステップ2 - 支配権の判定
監査人は経営者に対しInnovatechについて質問した。Moretti社はInnovatechの90%の株式を保有していた。IFRS 10に基づき、90%以上の所有は控除権のない支配権を示す。Innovatechは関連当事者である。経営者のしぶしぶとした返答は関連当事者でないことの根拠にはならない。
文書化ノート:IFRS 10に基づく支配権の評価。90%所有 = 控除権のない支配権。関連当事者として分類。
ステップ3 - 期末後取引のレビュー
監査人は期末後2ヶ月間の銀行取引をレビューした。Moretti社はM&C Holdingから€4.5Mの短期貸付を受け取り、1ヶ月後に返済した。この取引は取引記録に記載されていなかった。期末での支払能力の見かけ上の改善は、実際には親会社からの一時的な融資による操作であった。
文書化ノート:期末後取引分析。隠れた親会社融資を検出。開示を指示。
ステップ4 - 開示の評価
IFRS 24に従い、Moretti社は以下を開示する必要があった。(1) 親会社との関係、(2) Innovatechとの売上取引€1.2M、(3) 短期貸付€4.5Mと返済条件。初期のドラフト財務諸表はInnovatechを開示していなかった。修正を指示した。
文書化ノート:IFRS 24.9に基づく開示の評価。開示要件を確認。修正指示。
結論
関連当事者は売上取引と期末後融資を隠そうとする強いインセンティブがある。経営者からのリストだけに依拠することはISA 550.18違反である。分析的手続と期末後取引のレビューが不可欠である。

査察者と実務家が誤解する点

  • ISA 550.18違反が最も多く報告される検査指摘の1つ。 監査人が関連当事者リストの取得のみで、その妥当性をテストしていない。リストを鵜呑みにすることは手続ではない。経営者の意思や取引の外観ではなく、支配構造と法的関係に基づいて関連当事者を識別する必要がある。
  • 支配権の判定がIFRS 10に従うことを忘れている。 「関連当事者と思われない」「実質的には独立している」といった経営者の意見では足りない。IFRS 10の支配の定義(投資者が支配対象の活動を指示する力を持つこと)に基づく判定が必要である。その結果として支配が存在しないという結論が出ることは稀である。
  • 期末後取引をテストしない。 ISA 550.19は期末後取引のレビューを明示的に求めている。期末直前の関連当事者資金調達や期末直後の返済は、隠れた期末での支払能力問題を示唆している。期末後のキャッシュフロー領域は、関連当事者操作の最多発生地点である。
  • 経営者確認書への過度な依存。 ISA 550.26は経営者から関連当事者の完全性に関する書面確認を入手するよう求めているが、ISA 580.9により経営者確認書は他の証拠の代替にならない。仕訳テスト、取引データの分析、登記簿・商業登記の照会など、独立した裏付証拠による検証を並行して実施する必要がある。AFMの検査報告では、経営者確認書に依存して独自の特定手続を省略している事例が最も頻繁に指摘されている。

関連用語

IFRS 10 支配: 投資者がいつ子会社を支配していると判定されるかを定める。関連当事者の識別はこの判定に依存する。
IFRS 24 関連当事者取引の開示: 関連当事者取引と残高の開示要件を定める。ISA 550と連携して機能する。
支配的影響力: 50%未満の所有でも実質的な影響力を持つ場合、関連当事者関係を構成する。
実質基準対形式基準: 関連当事者の判定では、法的支配構造(形式)が優先される。
期末後事象: 期末後取引は隠れた関連当事者操作を示唆することがある。ISA 560と併せて検討。
リスク評価手続: 関連当事者の特定はリスク評価手続の一部である。ISA 315と連携。

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