Definition

レベル3入力値の公正価値測定が調書に載っていると、経験上、品管レビューで真っ先に突かれる。割引率の根拠、成長率の出どころ、比較対象の選び方、感度分析の幅。どれか一つでも裏付けが弱ければ、測定全体が揺らぐ。正直、公正価値の「数字」を合わせること自体はそこまで難しくない。難しいのは「なぜその数字か」を監査調書で説明しきることのほう。

3段階の入力値ヒエラルキー

IFRS 13.72~90が定める公正価値のヒエラルキーは、入力値の客観性で優先順位を付ける仕組み。

レベル1入力値はアクティブな市場での公表価格。上場株式や国債がこれに該当し、監査人にとっては検証の負荷が最も低い。レベル2入力値は市場で直接観測できるデータから導出されるもので、類似資産の取引価格、金利スワップのイールドカーブ、比較対象企業の倍率、オプション価格モデルの入力値などがここに入る。レベル3は市場で観測できない入力値で、企業独自の仮定に依存する。キャッシュフロー割引法の前提や非上場株式の将来収益予測がその典型。

現場では、レベル2とレベル3の境界が曖昧なケースに一番時間を取られる気がする。たとえば非上場企業の株式評価で、類似上場企業の倍率を使っているからレベル2だと主張する企業は多い。ただ、その倍率に「流動性ディスカウント」や「コントロールプレミアム」を加えた時点で、レベル3に分類すべきかどうかの判断が必要になる。

実務例:田中建設工業株式会社

対象:東京都の非上場建設企業、2024年度決算、売上高85百万円、IFRS報告者

田中建設は所有する東京郊外の工業用地(5,000平方メートル)を再評価した。アクティブな市場が存在しないため、レベル3入力値を使用。

公正価値の算定にあたり、企業は同じ地域での過去3年間の取引事例を調査した。隣接地域で過去6か月以内に1,200万円/平方メートルで売却された物件を比較対象とし、立地・面積・接道状況の差異を調整。結果として1,050万円/平方メートルの単価を設定。

調書メモ:比較対象取引の選定根拠と除外した取引の理由、各調整要因の算定根拠をスプレッドシートに記載

数値的検証では、土地面積5,000平方メートル × 1,050万円 = 525億円。帳簿価額140億円から再評価益385億円を認識。当初取得価額からの段階的な上昇を表にし、段階ごとの根拠(建設市場の変動、周辺開発の進展など)を記載した。

監査人の検証結果として、企業が使用したレベル3入力値は同地域の市場データに基づいており、調整仮定も合理的と判断。

監査人が見落としやすい点

IFRS 13.93の開示要件に対する検証が不十分なケースが目立つ。金額そのものの検証に力を入れる監査人は多いが、IFRS 13.93(a)~(e)で求められる定量的・定性的開示(測定方法の変更理由、感度分析)の完全性まで手が回っていないことがある。レベル3入力値の変動範囲の開示と、そのレンジ内に認識額が妥当に位置しているかどうか。ここが抜けると、CPAAOBの検査で指摘対象になりやすい。

企業が外部の評価専門家に依頼した場合も油断できない。評価専門家がIFRS 13の要件ではなく業界慣行に基づいて測定していることがある。評価専門家の仮定(割引率や比較対象企業の選定基準)に企業側の判断が紛れ込んでいないか。ここを確認しないまま「専門家の報告書があるから大丈夫」で終わらせている調書は、繁忙期の現場だと実際に見かける。

決算後に関連資産が売却された場合、売却価格がレベル3測定値と大幅に乖離していることがある。この乖離の原因を分析し、測定日時点で検出可能だったかどうかの検証が抜けやすい。後発事象のレビューでここまで踏み込めるかどうかが、調書の防御力を左右する。

関連する用語

- IFRS 13レベル1入力値:アクティブな市場での公表価格。最も客観的で信頼性が高い測定方法 - IFRS 13レベル2入力値:市場で直接観測できる入力値。類似資産の価格や利率から導出 - IFRS 13レベル3入力値:市場で観測できない入力値。企業の仮定と見積もりに依存し、監査上の検証負荷が最も高い - 公正価値測定の開示:IFRS 13.93で求められる定量・定性情報 - 評価モデル:キャッシュフロー法や類似企業法など、レベル2・レベル3測定に用いられる技法 - 市場参加者仮定:IFRS 13の中核。資産・負債を企業固有の仮定ではなく市場参加者の視点で測定する要件

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- `glossaryDefinition`: 公正価値(IFRS 13)の定義 - `keyTakeawaysHeading`: 重要なポイント - `howItWorksHeading`: 仕組み - `workedExampleHeading`: 実務例:田中建設工業株式会社 - `auditorsGetWrongHeading`: 監査人が見落としやすい点 - `relatedTermsHeading`: 関連する用語 - `relatedTermsIntro`: 公正価値測定に関連する用語を以下に示します - `snippetDefinition`: 公正価値とは、測定日において市場参加者間での秩序正しい取引で資産が交換される、または負債が決済される価格(IFRS 13.9) - `governedByLabel`: 根拠基準 - `governedByValue`: IFRS 13.9、IFRS 13.24~28、IFRS 13.93 - `printButton`: 印刷 - `shareButton`: 共有 - `backToGlossaryLink`: 用語集に戻る

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