Definition

正直、レベル2の投入値ほど審査で揉める項目は少ない。「観測可能だからレベル2でいい」という説明で済ませているチームが多いが、JICPAの品質管理レビューでは「なぜレベル1ではないのか」の根拠記載が欠落しているケースが繰り返し指摘されている。

重要なポイント

- レベル2の投入値は、同一資産・負債の市場価格から導き出されるか、観測可能な市場データから合理的に推測可能でなければならない。 - レベル1の入力値が利用不可な場合、監査人はレベル2の妥当性を検証するために、投入値の入手先と信頼性を確認する。ここが審査で最も論点になる部分。 - 監査調書で最も頻繁に不足している項目は、各レベル2投入値の出所と「なぜレベル1が利用不可であるか」の説明である。

仕組み

IFRS 13.81はレベル2投入値を、活発でない市場における公表価格、または観測可能な市場データに基づく評価技法の投入値と定義している。この定義が実務で問題になるのは、企業が段階的に価値評価方法を選択しなければならないからである。資産が同一市場で定期的に取引されていればレベル1。その市場が活発性を失った場合、または同一資産の取引がないものの類似資産の価格が確認できれば、その情報を使ってレベル2の投入値を構築する。

典型的な例が国債と社債の違いである。国債はレベル1(毎日公開価格あり)。一方、社債は市場が薄いことが多く、類似国債の利回りスプレッドからレベル2で評価する。

監査実務では、レベル2はレベル1とレベル3の中間に位置する曖昧さを持つ。「観測可能」とは何か。どの程度の観測可能性があればレベル2に留まれるのか。IFRS 13.B35は「企業が市場参加者が価格設定の際に使用する観測可能入力値にアクセスできること」を求めている。市場で数例の取引があれば十分なのか、定期的な見積評価まで必要なのか。ここが監査上の判断の分かれ目となる。

実例: トウキョウ産業機器リース株式会社

クライアント: 産業機器リース企業、トウキョウ産業機器リース株式会社、2024年度、売上52億円、IFRS任意適用会社。

クライアントは重機用ディーゼルエンジンの長期リース資産(3年契約、残存期間18か月)を保有しており、2024年12月末時点で公正価値測定が必要となった。

ステップ1: 活発な市場での公表価格の存在確認

監査人は、同一エンジン型式(Caterpillar 3412C)の新品市場価格が存在するか確認。国内の産業機器販売業者2社から見積を取得し、同一仕様の新機械で3,900万円~4,100万円の範囲内と判明。しかしクライアントの機械は中古(18か月使用)でオーバーホール歴なし。新機械の価格は直接使用できない。調書メモには「IFRS 13.81に基づきレベル2投入値を選択。同一資産の活発な市場取引なし。類似資産の新価格から減耗控除」と記載。

ステップ2: 類似資産の市場価格と減耗係数の収集

監査人は同型エンジンの中古市場の取引事例を検索。過去12か月間のオンライン産業機器市場(国内外の取引プラットフォームから得られた10件)において、使用期間18か月のCaterpillar 3412Cが2,700万円~3,100万円で取引されていることを確認。その平均は2,900万円。調書には「観測可能市場データ(過去12か月間のオンライン取引10件)。活発な市場は存在しないため、類似資産からのレベル2価格推定」と記載。

ステップ3: クライアント保有機械との比較可能性検証

監査人は収集した中古機械の事例とクライアント保有機械の差異を評価。クライアント機械はオーバーホール履歴なし、保証期限切れ。他の事例機械の一部には新しいオーバーホール実績がある。この差異が価値にどう影響するかについて、クライアント経営陣の見積のみに依存していた。ISA 540.16は、複雑な見積には外部専門家の関与が必要な場合があると定めている。当機械は標準的な評価対象ではなく、経営陣見積のみに依存するリスクがあるため、追加監査手続を検討する必要がある。

ステップ4: レベル2投入値の確定と金額修正

監査人は平均中古価格2,900万円をクライアントの計算書に反映するよう指示。クライアントは当初3,280万円(新価格の80%)で評価していた。2,900万円への修正により減損損失380万円を認識。調書には「レベル2価格2,900万円。クライアント当初評価3,280万円。修正380万円。直近12か月の市場取引10件から平均値算出」と記載。

結論: レベル2投入値は市場データに基づいており、防御可能な水準にある。ただし、複数の類似資産を平均化することで個別差異(保証、メンテナンス履歴)を平準化している点は懸念が残る。この方法がIFRS 13.B35の「市場参加者の視点」に合致しているか、追加の確認書が必要になる可能性がある。

監査人とレビュアーが誤解する点

複数の観測可能データを合算する際の濃淡

6件の取引があれば十分と判断する監査人が多い。しかし、それらがすべて同じ市場セグメント(大型建設会社向けリース販売)からのものであれば、統計的信頼性が低い場合がある。IFRS 13.B35では「市場参加者の仮定」を強調しており、取引件数よりも取引パターンの代表性が問われる。

レベル1が利用不可である理由の文書化不足

監査チームは「同一資産の市場価格がないため」という一般的な説明で終わらせ、具体的に「なぜこの資産には活発な市場がないのか」を記載していないことが多い。国債のように毎日の公開価格がなぜ存在しないのかを明確にすることが、レベル2への段階付けを正当化する証拠となる。

複雑な見積における外部専門家の役割

企業財務の観測可能投入値(公開利回りなど)については専門家不要のケースが大半。しかし、業界固有の減耗モデル、技術仕様による価値の差異、市場セグメンテーションの妥当性については、専門家の関与がISA 540.16に沿った防御ラインになる。ここを怠ると、審査段階で差し戻されるリスクが高い。

関連用語

- 公正価値階層レベル1: 活発な市場での公表価格。最も信頼性が高い投入値。 - 公正価値階層レベル3: 観測不可能な投入値に基づいた評価。レベル1、2が利用不可の場合に使う。 - 観測可能な市場データ: 市場参加者がアクセス可能で、信頼性がある価格またはボリューム情報。 - 複雑な見積: ISA 540に基づき、外部専門家の関与が必要な場合がある判断。複雑さの判定はIFRS 13の投入値レベル判定と並行して実施する。 - 市場参加者の仮定: IFRS 13の基本原則。観測可能データは企業固有ではなく、市場参加者が使用する前提で選択されなければならない。 - 評価技法: IFRS 13.61に定義される市場法、原価法、インカムアプローチ。各方法で複数の投入値が組み合わされる。

関連ツール

ciferiの公正価値評価チェックリストを使えば、IFRS 13の段階付けと各レベルの文書化要件を体系的に確認できる。レベル1からレベル2への移行判定、観測可能投入値の妥当性検証で役立つ。

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