仕組み

タクソノミー適格活動の監査は、3つの段階で進みます。
まず、被監査会社がどの経済活動をタクソノミー適格活動と分類しているか特定することです。EU分類規則では、気候変動緩和、気候変動適応、水資源、循環経済、汚染防止、生物多様性という6つの環境目的ごとに、適格活動が明示されています。被監査会社の事業ポートフォリオを確認し、該当する活動を洗い出します。この段階では、被監査会社の定義が基準と一致しているか、産業コードが正確か、活動の境界が明確かを検証することが重要です。
次に、適格活動の売上高、営業費用、資本支出の配分が正確に計算されているか検証します。被監査会社の方法論(トップダウン配分、個別活動追跡など)が首尾一貫しているか、計算が正確か、基礎となる取引が支持されているかを検査します。配分の基礎となる数値(総売上、総営業費用など)が財務諸表と一致していることを確認することも必要です。
最後に、開示内容を検査します。EU分類規則の第8条と第10条で定められた開示要件を満たしているか、比較可能性のための前年度との比較が提示されているか、定量的データの根拠が文書化されているかを確認します。

実例: グリーンテック・インベストメンツ社

クライアント: ドイツの再生可能エネルギー企業、2024年度決算、総収益€58M、IFRS報告者
背景: グリーンテック・インベストメンツ社(ミュンヘン)は風力発電施設の開発と太陽光発電パネルの製造を行う。全事業の約70%が気候変動緩和に関連すると経営者は判断している。
第1段階: 適格活動の特定
被監査会社の事業分類を確認する。
文書化ノート: 活動分類の判断根拠をExcelシートに記載。各基準のURL、社内マッピング表、除外理由(給電網接続が「サポート」ではなく「移行活動」に該当する可能性の検討記録)
第2段階: 収益配分の検証
グリーンテック社は総売上€58Mのうち、€40.6Mをタクソノミー適格活動に配分している。その内訳は以下の通り。
配分根拠を検査する。各セグメントの売上伝票をサンプリングする(15件抽出)。基礎となる総売上€58Mが総勘定元帳の売上高と一致していることを確認する。
文書化ノート: 売上配分テストで不適合なし。風力事業の社内売上レポートと監査会計ソフトウェアのセグメント売上が€0.05Mのレベルで一致。太陽光パネル部門の製品コード(風力補機部品の不正分類がないか確認)を抜き取り検査。
配分比率:€40.6M ÷ €58M = 70.0%(経営者の主張と一致)
第3段階: 開示内容の検査
年次報告書のサステナビリティセクションに、以下の開示を確認する。
文書化ノート: 経営者に確認したところ、太陽光パネル事業の獲得により増加とのこと。契約書と納入記録で実額を確認。
営業費用の配分(€15.2M)、資本支出の配分(€8.9M)についても、同様の手続きを実行。
結論: タクソノミー適格活動として報告された€40.6Mは、支持されている。ただし、比較期間データの説明が不十分であったため、脚注を追加するよう経営者に指導した。

  • 風力発電施設開発:タクソノミー適格活動(基準EU 4.1に該当)
  • 太陽光パネル製造:タクソノミー適格活動(基準EU 4.3に該当)
  • 給電網接続サービス(子会社経由):タクソノミー適格活動の可能性あり、だが社内ガイダンスでは「サポート活動」に分類
  • 風力事業(直接売上):€24.3M
  • 太陽光パネル売上:€14.2M
  • その他(材料販売、ライセンス):€2.1M
  • タクソノミー適格活動の売上高:€40.6M、開示済み ✓
  • 前年度との比較:2023年€39.1Mから増加、理由は明記なし ← 再度の質問が必要

監査人と実務担当者が陥りやすい誤り

第1階層: 規制当局の検査指摘
EU内のサステナビリティ監査に関する実地試査では、タクソノミー分類の過度な拡大解釈が指摘されています。特に、「移行活動」(transition activities)と「適格活動」の境界が曖昧な産業(エネルギー供給、自動車製造)で、被監査会社が限定的な基準の適用を試みるケースが報告されています。国際的な検査指摘では、活動の定義が基準文書の厳密な読み込みと一致していないことが最も多い非違事項です。
第2階層: 基準参照の実務誤り
EU分類規則の技術的基準(Technical Screening Criteria)の改訂履歴の管理不足。2022年の気候委任令改訂以降、複数の環境目的について基準が刷新されました。被監査会社が旧版の基準に基づいて分類を継続している場合、監査人がそれを見過ごすことがあります。また、「実質的な寄与(substantial contribution)」と「著しい害をもたらさない(do no significant harm, DNSH)」の2つの基準の両方を満たすことの検証が不完全なままの調書が多く見受けられます。監査人が「適格」であることだけを検証し、DNSHの評価を省略する事例があります。
第3階層: 文書化と一貫性の欠落
タクソノミー分類の判断根拠が経営者の頭の中にあり、監査証拠として提示されない場合があります。特に小規模な地域銀行や保険会社では、サステナビリティチームと財務チームの連携が弱く、収益配分の計算根拠が複数の部署に散在しているため、監査人が全体像を把握できないケースが報告されています。

関連用語

  • タクソノミー適合活動(Taxonomy Aligned Activity): 単に適格であるだけでなく、技術的基準を全て充足し、かつDNSHを満たす活動。適格より条件が厳しい。
  • 実質的な寄与(Substantial Contribution): 6つの環境目的の1つに対して、経済活動がもたらす正の影響の要件。数値基準が活動ごとに定められている。
  • 著しい害をもたらさない(Do No Significant Harm, DNSH): タクソノミー適合活動の必須条件。例えば気候緩和に寄与する活動が、水資源や生物多様性を著しく害していないことを確認する。
  • 環境目的(Environmental Objective): 気候変動緩和、気候変動適応、水資源、循環経済、汚染防止、生物多様性の6つ。全てのタクソノミー適格活動はこれらのいずれかに該当する。
  • 経済活動(Economic Activity): タクソノミー規則で分類・定義される個別の産業活動。基準の承認リストに載る活動のみが分類対象。
  • 技術的基準(Technical Screening Criteria): EU分類規則の附属文書に記載される詳細な基準。各活動が環境目的への貢献を実質的に果たすための条件を規定。

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タクソノミー分類ワークシートを使用すれば、被監査会社の活動分類が基準と一致しているか、また収益配分の計算が系統的に検証できます。このツールは環境目的ごとのチェックリスト、配分計算テンプレート、開示内容の検証ステップを統合しており、監査手続を標準化する。

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