繰延税金計算ツール:フランス | ciferi

フランスは欧州連合のIAS 12採用国である。フランス上場企業および多くの大規模非上場企業はIAS 12(EU採用版)を適用する。フランス会計基準(Plan Comptable Général)を適用する事業体は、繰延税金に関する異なるルールを適用するが、IAS 12の基本的な構造に類似している。...

概要

フランスは欧州連合のIAS 12採用国である。フランス上場企業および多くの大規模非上場企業はIAS 12(EU採用版)を適用する。フランス会計基準(Plan Comptable Général)を適用する事業体は、繰延税金に関する異なるルールを適用するが、IAS 12の基本的な構造に類似している。
フランスの法人税率は近年改革された。2022年から、売上高7,500万ユーロを超える企業は25%の法人税率(Impôt sur les Sociétés)を適用される。売上高が7,500万ユーロ以下の事業体は、税務所得が42万5,000ユーロまでは19%の軽減税率が適用される。さらに、地域連帯税(Contribution Sociale Généralisée)が約2.9%追加される場合がある。したがって、繰延税金の測定に使用される実効税率は、フランス親会社とフランス子会社の間でも異なる可能性がある。IAS 12.47は、繰延税金を、一時差異が解消される際に適用されると予想される税率で測定することを求めている。ほとんどのフランス企業は25%を使用するが、売上高基準に基づいて軽減税率の対象となると予想される小規模事業体は、19%を使用すべきである。

規制上の背景

フランス金融市場機構(Autorité des marchés financiers、AMF)は、その年次市場監視報告書において、繰延税金を監視の重点項目として繰り返し取り上げている。AMFは2023年の監視活動において、上場企業の財務諸表における繰延税金の認識と測定に関連する検査指摘を実施した。主な所見は以下の通り。
一時差異の完全性に関する指摘が最も頻繁である。IFRS 16のリース会計により、使用権資産とリース債務が別個の一時差異を生じさせることを、多くのフランス企業が見落としている。IAS 12.15-A と IAS 12.20-Aは、リース関連の一時差異を個別に追跡することを要求している。IFRS 3の事業結合により、被取得企業が認識していなかった資産・負債に公正価値調整が生じ、その調整は一時差異を創出する。多くのフランス企業は、純粋な取得側(被取得企業ではない親会社)の固定資産台帳に限定して、一時差異を識別する傾向がある。しかし、グループ全体の連結包括利益計算書を作成する際は、全ての一時差異を特定する必要がある。
繰延税金資産の回収可能性評価に関する指摘も多い。IAS 12.24は、繰延税金資産を「確認可能な将来の課税所得に対して利用可能である可能性が高い」場合にのみ認識することを要求している。経営者の利益予測に大きく依存する判断であり、このAMFの検査では、経営者の予測を十分にテストすることなく、企業が繰延税金資産を認識していることが明らかになった。また、税務上の損失繰越控除に対する繰延税金資産については、回収可能性判断が、単なる一時的な損失として扱われ、恒久的な利益不足シナリオが十分に考慮されていない。
税率の変更に伴う再測定の問題も指摘された。フランスの法人税率が2022年に19%から25%に変更された際、複数の企業は、この税率変更が「実質的に制定された」時点でさかのぼって繰延税金残高を再測定しなかった。IAS 12.46-47は、実質的制定時点での新税率適用を要求している。この再測定漏れにより、繰延税金負債が過小計上された。

実務上の指針

フランスの公認会計士および監査人は、IAS 12の適用に際して以下の点に留意すべき。
固定資産の減価償却と税務償却の相違は、フランスの繰延税金計算における最も一般的な一時差異である。フランスの税務上、事業体は加速償却(dégressif)を選択できる。この加速償却は、最初の数年間で大きな税務控除を生じさせ、一時的な課税性一時差異を創出する。会計上の減価償却(通常、定額法)との相違は、資産の全耐用年数にわたって逆転する。固定資産台帳から個別資産の税務上帳簿価額を抽出し、それを会計上の簿価と比較することが必須である。多くのフランス企業は、税務申告書から要約された減価償却額を使用するが、これは特定の資産または資産グループに対する一時差異の正確な特定に不十分である。
在庫の評価損は、重要な控除可能一時差異を生じさせる。IAS 2により、在庫は低い方の原価または正味実現可能価額で測定される。正味実現可能価額の低下により評価損が認識されるが、多くのフランス税務当局は、この評価損を実現するまで(つまり、在庫が売却または廃棄されるまで)税務上の控除を許容しない。この場合、評価損に対する繰延税金資産が生じるが、IAS 12.24の回収可能性テストが必須である。特に、滞留在庫または陳腐化した在庫の場合、その処分から生じる課税所得が確認できるかどうかの評価が重要である。
給付債務(退職給付債務、従業員賞与プール)は、フランスで重要な控除可能一時差異を生じさせることが多い。IAS 19の退職給付債務(defined benefit obligations)は、IAS 19の仮定(割引率、退職者の増加率など)に基づいて毎期再測定される。一方、フランス税務上の控除は、現金で支払われた給付に限定される。したがって、IAS 19の負債残高と税務上の控除可能額との間に一時差異が生じる。
リース会計(IFRS 16)は、2019年の強制適用以降、フランス企業における重要な一時差異の源泉となっている。IAS 12は、リース開始日において、使用権資産と責務について個別の繰延税金を認識することを要求している(2021年改正により、初期認識除外が廃止)。リース開始日、使用権資産と責務の金額は通常同一であり、関連する一時差異は相殺する可能性がある。しかし、その後の測定において、両者は異なる速度で変化する(使用権資産は直線法で減価償却、責務は利息費用を反映)。したがって、繰延税金を、リースごとに個別に追跡する必要がある。

監査上の期待

フランス企業の監査において、監査人が繰延税金に関して直面する典型的な課題を以下に列挙する。
固定資産の税務上帳簿価額の検証が不十分である。監査人は、多くの場合、税務申告書の減価償却サマリーを受け入れるが、個別資産または資産グループごとの税務償却スケジュールを確認していない。特に、加速償却の適用が正確であるかどうかは、税務申告書の詳細を確認することで初めて検証可能である。また、固定資産の取得日、除去日、および当初原価が、税務記録と会計記録で一致しているかどうかの確認も重要である。
利益予測に基づく繰延税金資産の回収可能性評価への十分な異議・質問が欠けている。経営者が、向こう3年から5年の利益予測を提供した場合、監査人は、その予測が現実的であるか、および過去の実績と一貫しているかを評価する必要がある。さらに、予測期間後の利益見通しも検討する必要がある。税務上の損失繰越控除に対する繰延税金資産については、使用可能性の制限がないかどうか(例えば、所有権の変更による制限)も確認が必須である。
一時差異の完全性チェックが限定的である。監査人は、固定資産、在庫、給付債務などの主要な項目に焦点を当てることが多く、その他の一時差異(例えば、非金融資産の減損、割賦販売に関連する一時差異、先物契約の公正価値変動等)を見落とすことがある。IAS 12は、全ての一時差異の識別を求めており、監査人は、財政状態計算書上のすべての主要な資産および負債について、一時差異が存在するかどうかを体系的に検証する必要がある。
税率の変更に伴う再測定漏れが発生することがある。2022年のフランスの税率変更時、複数の企業および監査人が、既存の繰延税金残高の再測定が必要であることを認識していなかった。再測定の効果は、原来その繰延税金が認識された場所(利益または損失、その他包括利益、または資本)を通じて認識される必要がある。

機能概要

本計算ツールは、IAS 12に基づいて、以下の手順で繰延税金資産・負債を計算します。
計算結果は、IAS 1.54(n)および(o)に基づいて、財政状態計算書の貸借対照表上に「繰延税金資産」と「繰延税金負債」として表示されます。さらに、IAS 12.81以降の開示要件(特に、IAS 12.81(c)の税率調整表)に対応するワークペーパーも自動生成されます。

  • 一時差異の識別: 各資産・負債について、会計上の簿価と税務上の帳簿価額を入力します。
  • 一時差異の計算: 差額がプラスの場合(簿価 > 税務帳簿価額)は課税性一時差異、マイナスの場合は控除可能一時差異として分類されます。
  • 税率の適用: 適切な税率(フランス企業の場合、通常25%)を適用して、繰延税金負債または繰延税金資産を計算します。
  • 回収可能性評価: 繰延税金資産について、将来の課税所得で利用可能であることが「可能性が高い」かどうかの評価が生成されます。