重要なポイント

  • 許容虚偽表示額はパフォーマンス重要性と同額又はそれ以下に設定する
  • 許容虚偽表示額とサンプルサイズは逆の関係にある( 11)
  • 22は個別比較と集計比較の二段階評価を求めている

仕組み

ISA 530.5(c)は許容虚偽表示額を「特定のサンプリング対象について監査人が設定する金額であり、監査人が受容する母集団の虚偽表示の最大額」と定義している。実務上、この金額はパフォーマンス重要性と同額又はそれ以下に設定される。

全体重要性、パフォーマンス重要性、許容虚偽表示額の関係を整理する。全体重要性は財務諸表全体に対して設定される基準値であり、ISA 320.10に基づく。パフォーマンス重要性は全体重要性の50%~75%として設定され、ISA 320.11に基づく。許容虚偽表示額は特定の勘定科目のサンプリングに適用される閾値であり、パフォーマンス重要性以下に設定される。特定の勘定科目にリスクが集中している場合や、母集団の分散が大きい場合は、パフォーマンス重要性よりも低い金額を設定する。

許容虚偽表示額とサンプルサイズは逆の関係にある。許容虚偽表示額を低く設定するほど、同じ信頼水準を達成するために大きなサンプルが必要となる(ISA 530.A11)。逆に許容虚偽表示額を高く設定すれば小さなサンプルで足りるが、虚偽表示を検出しない確率が高くなる。この逆関係の理解はサンプリング計画の合理性を裏付ける上で不可欠である。

実務例:Novak Strojirna s.r.o.

被監査会社:チェコの工作機械製造企業、2025年度、売上高3,400万EUR、IFRS適用。全体重要性34万EUR(売上高の1%)、パフォーマンス重要性22万EUR(全体重要性の65%)。

ステップ1 — 許容虚偽表示額の設定
売掛金残高580万EURに対するサンプリングを計画する。売掛金は前期に重要な虚偽表示が識別されなかったため、許容虚偽表示額をパフォーマンス重要性と同額の22万EURに設定した。棚卸資産残高890万EURについては、前期のサンプリングで推定虚偽表示8万EURが識別されていたため、許容虚偽表示額を16万EURに引き下げた。
監査調書への記載:各勘定科目の許容虚偽表示額、パフォーマンス重要性との関係、引下げの根拠(前期の虚偽表示履歴)を記録する。

ステップ2 — サンプルサイズへの影響
売掛金:許容虚偽表示額22万EUR、母集団580万EUR、期待誤差ゼロ、信頼係数2.0の場合、サンプルサイズ = 580万 × 2.0 / 22万 = 53件。棚卸資産:許容虚偽表示額16万EUR、母集団890万EUR、期待誤差8万EURを考慮すると拡大係数1.5を適用し、サンプルサイズ = 890万 × (2.0 + 1.5 × 8万/16万) / 16万 = 153件。許容虚偽表示額の引下げによりサンプルサイズが大幅に増加した。
監査調書への記載:サンプルサイズの計算過程、使用した信頼係数、期待誤差の根拠を記録する。ISA 530.A11を参照し逆関係を明記する。

ステップ3 — ISA 530.A22の二重比較
サンプリング完了後、売掛金の推定虚偽表示は7万EUR、棚卸資産の推定虚偽表示は11万EURとなった。第一の比較:各推定虚偽表示は各許容虚偽表示額を下回っている(売掛金7万 < 22万、棚卸資産11万 < 16万)。第二の比較:推定虚偽表示の合計18万EURに他の識別済み虚偽表示3万EURを加えた21万EURを全体重要性34万EURと比較。21万EURは全体重要性を下回る。両方のテストに合格した。
監査調書への記載:ISA 530.A22に基づく二重比較の計算と結論を記録する。第一の比較(個別)と第二の比較(集計)を区分して文書化する。

結論:許容虚偽表示額の設定は前期の虚偽表示履歴を反映して勘定科目ごとに差をつけた。ISA 530.A22の二重比較により、サンプル結果は個別にも集計でも許容範囲内であることが確認された。

よくある誤解

  • 許容虚偽表示額とパフォーマンス重要性を常に同額とする 両者は通常一致するが、ISA 530はリスクの高い勘定科目では低い金額を設定することを認めている。前期の虚偽表示履歴、母集団の特性、当該勘定科目の固有リスクを考慮せずに機械的に同額を適用するのは不適切である。
  • 逆関係を無視したサンプルサイズの決定 許容虚偽表示額を引き下げたにもかかわらずサンプルサイズを据え置くと、サンプリングリスクが過大となり虚偽表示を見逃す確率が高まる。ISA 530.A11の逆関係は常にサンプル計画に反映しなければならない。
  • 第一の比較のみで評価を完了する ISA 530.A22は二段階の比較を求めている。推定虚偽表示が許容虚偽表示額を下回っても、他の虚偽表示と合算して全体重要性を超過する場合がある。第二の比較(財務諸表レベルの集計評価)を省略してはならない。
  • 設定根拠の文書化不備 許容虚偽表示額をなぜその金額に設定したのかの根拠を調書に記載しなければ、査察でサンプリング計画の合理性を説明できない。パフォーマンス重要性との関係と調整理由は必須の記載事項である。

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