仕組み

損益計算書は複式簿記の勘定閉鎖プロセスにより作成される。IFRSに基づく場合、企業は営業活動から発生した収益と費用、そして投資活動及び財務活動に関する利益又は損失を表示する。IAS 1.85は、収益及び費用を営業と非営業に分類する際の判断基準を定めている。

監査人がこの区分の妥当性を評価する際、二つの軸を押さえる。第一に、営業活動はその企業の本来の事業活動から直接発生した取引である。投資活動や財務活動から発生した利益又は損失は、営業外損益として区分される。第二に、計上時期の正確性である。売上は商品引渡し時、費用は発生主義により計上される。IAS 1.82は、費用の分類方法(機能別分類又は性質別分類)を企業が選択できることを定めており、その一貫性も監査対象となる。

実務では、営業損益と非営業損益の境界線が不明確なケースが目立つ。経常的に発生する投資活動の利益を営業利益に含める誤分類、償却資産の売却益を営業外利益ではなく営業利益に計上する事例、こうしたものだ。金融機関や投資家は営業利益を経営成績の指標として用いるため、監査人は特に注視する。

実例:田中工業株式会社

クライアント:日本の機械製造企業。FY2024年度、売上8,500万円、IFRS基準報告企業。

ステップ1: 営業と非営業の区分確認 田中工業の営業利益は、機械製造・販売から発生する売上から売上原価及び販売費・一般管理費を控除して計算される。売上8,500万円、売上原価5,100万円、販売費・一般管理費2,000万円、営業利益は1,400万円となる。 文書化メモ:営業利益の内訳を承認済みの会計方針に基づいて検証。営業と非営業の分類ルールをクライアントの会計マニュアルで確認。

ステップ2: 非営業利益の項目検証 同期間、投資有価証券の売却益が200万円発生した。クライアントはこの売却益を非営業利益に正しく分類していた。償却資産の売却損20万円も同様に非営業損失として計上されていた。 文書化メモ:有価証券売却益の計上根拠(売却日、取得原価、実現益の計算)をトレース。固定資産の売却に関する会計伝票をサンプル検査。

ステップ3: 期間を跨ぐ取引の確認 期末(3月31日)後に売上請求書が発行された機械販売1件(売上100万円相当)が、誤って当期の売上に含められていないかを確認した。月次売上明細から期末前後の請求日をサンプルで監査調書に記録し、すべての取引が正しい会計期間に計上されていることを確認した。 文書化メモ:売上カットオフテストの結果、誤分類なし。期末前後30日の請求書と納品書をマッチング。本調書はファームの品管レビュー対象。

結論 営業利益1,400万円、非営業利益180万円、当期利益1,580万円は、IFRSに基づいて正しく分類・計上されていた。営業と非営業の区分は経営成績の分析に直結するため、この監査手続を省くと検査で指摘される。

監査人及びレビュアーが誤解しやすい点

- ISA 510.3から導出される誤り: 当期の損益計算書を監査する際、前期末の残高テストに注力しすぎて、当期の営業と非営業の区分評価が薄くなる。ISA 510は前期末残高を扱う基準だが、当期の損益項目の分類監査は ISA 500(監査証拠)及び ISA 330(回応手続)の範囲である。

- IAS 1の機能別・性質別分類の判断: 機能別分類(製造部門ごとの損益)と性質別分類(原材料費、労務費などの性質ごと)の切り替えを企業が行う際、監査人がその妥当性を評価する調書が手薄になりやすい。特に企業が分類方法を変更した場合、IAS 1.45は過年度比較情報を遡及的に適用することを要求するが、この対応漏れが散見される。

- 経常的な非営業取引の営業利益への含有: 営業利益を高く見せるため、本来は非営業利益に分類すべき利益を営業利益に含めるケース。例えば、定期的に行われる子会社株の売却益、または常習的なデリバティブ取引の利益を営業利益に分類する誤りだ。ISA 240.A1は、経営者の圧力を背景にした財務諸表の不正表示リスクを特に注視するよう求めている。正直、営業利益を膨らませたい経営者の意向と、それを跳ね返せない監査チームの構図は、入所してからずっと変わらない。

関連する用語

- 営業利益: 営業活動から直接発生する利益。損益計算書の中核的な指標。

- 特別損益(廃止されたコンセプト): IFRS 2018年以降、廃止。すべての損益項目が通常の損益として表示される。

- 売上: 商品又はサービス提供による対価。IFRS 15により収益認識のタイミングが厳密に定義される。

- 発生主義会計: 損益計算書作成の基礎となる会計原則。

- 会計期間: 通常1会計年度。損益計算書は特定の会計期間の成果を表示する。

- IAS 1財務諸表の表示: 損益計算書の表示方法及び分類要件を定める基準。

関連するツール

ciferi.com の 収益認識テンプレート では、IFRS 15に基づく複雑な収益取引の計上時期と分類を段階的に整理できる。営業収益と非営業収益の境界が不明確な取引について、特に有用である。

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