仕組み

肯定的確認の核となるのは、被監査会社を経由しない、独立した第三者からの直接的な回答である。監基報330.24は、売上高の存在テストにおいて、肯定的確認を最初の選択肢として位置付けている。特に金融機関への預金確認や売掛金の存在確認では、銀行や顧客から直接回答を得ることが、被監査会社内部の記録よりも信頼性が高いと見なされている。
実際の手続では、監査人が照会状を作成し、被監査会社の住所を示さずに監査人の事務所あてに回答するよう依頼する場合が多い。被監査会社従業員が照会状に手を加えたり、事前に回答を見たりする可能性を排除するためである。回答期限を設定し、期限までに回答がない場合の取扱いを事前に決める。監基報330.A107は、無回答の場合の代替手続の実施と、その代替手続では十分な証拠が得られない場合の意見への影響を求めている。
金融機関への預金残高確認は、監査実務では最も頻繁に実施される肯定的確認である。照会日時点の預金残高、借入金残高、担保設定の有無を一度の照会で確認できる。複数の金融機関がある場合は、各金融機関に個別に照会する。顧客からの売上高確認や仕入先への買掛金確認も、肯定的確認を使用する一般的な場面である。

実例:ハンザ機械製造GmbH

対象: ドイツの機械製造企業、売上高450万ユーロ、BilanzV(ドイツ商法典)・IFRS併行報告
ステップ1: 被監査会社の金融機関一覧を入手
ドレスデン銀行、ライプツィヒ貯蓄銀行、シュターツバンク3行から預金・借入。6月30日時点で各行あての照会状を作成。
文書化ノート:監査調書に「被監査会社から独立して入手した金融機関リスト」と記載。照会対象金融機関の完全性をチェック。
ステップ2: 照会状の作成と送付
各銀行あてに、被監査会社住所を記載せず、監査人の事務所住所を返信先とする照会状を送付。預金残高、借入金残高、担保設定、定期貸付金の有無を照会項目とした。照会日時点での回答を依頼し、回答期限を7月20日に設定。
文書化ノート:各照会状のコピーと送付日付を調書に添付。署名権限者(CFO)による事前確認は行わない。
ステップ3: 回答の受け取り
3行すべてから直接回答を受け取った。ドレスデン銀行からは預金150万ユーロ、借入金50万ユーロ、担保なしの回答。ライプツィヒ貯蓄銀行からは預金80万ユーロ、借入金80万ユーロ、動産担保設定ありの回答。シュターツバンクからの回答はなし。
文書化ノート:直接受け取った回答は原本(銀行のレターヘッド入り)またはスキャン画像として調書に保存。回答内容を財務諸表の計上額と突合。
ステップ4: シュターツバンク(無回答)への対応
シュターツバンクからは7月25日までに回答がなかった。代替手続として、被監査会社の通帳写し、振替伝票、通帳の最終月の出納確認を実施。月末残高約15万ユーロを確認。銀行確認との不一致はなし。
文書化ノート:無回答の理由は不明。代替手続として「通帳の実査及び月末出納の確認」と記載。代替手続の証拠の強さは直接確認より低いことを調書内の評価コメントに記載。
結論
3行の直接回答と1行の代替手続により、預金残高合計245万ユーロ、借入金合計130万ユーロの存在を確認した。財務諸表計上額240万ユーロ(預金)、128万ユーロ(借入金)との差異は許容虚偽表示額以下であり、確認は完了。

監査人と検査当局が誤解しやすい点

第一段階: AFM(オランダ金融庁)の2023年度モニタリングレポートでは、肯定的確認の実施において「無回答を自動的に不存在と見なしていない」ことを確認できた事務所の割合は約60%であった。残る40%では、無回答について代替手続を実施していないか、代替手続の証拠の強さを過度に評価していた。
第二段階: 監基報330.24は「肯定的確認を実施する場合、無回答または矛盾する回答を監査証拠として利用する」と定めているが、多くの事務所では「被監査会社が異議を唱えない場合は証拠である」と解釈している。この解釈は正確ではない。無回答は存在しない証拠ではなく、証拠の不足であり、代替手続を必要とする。
第三段階: 実務上の課題として、新型コロナウイルス感染症以降、金融機関からの直接確認回答の入手が遅延する傾向が続いている。この遅延に対応して、監査人が事前に「金融機関からの回答が遅い場合は、監査人が受け取った回答でも仮に進める」という了解を得ようとする事務所が見られる。この対応は、確認の独立性を損なう可能性があり、監基報330.24の「被監査会社を経由しない」という原則と矛盾する。

関連用語

  • 否定的確認: 被監査会社を通じて第三者に照会し、異議がない場合のみ肯定的な回答と見なす手続。肯定的確認より証拠の強さは低いが、実施の効率性が高い。
  • 監基報330: 監査証拠の種類と入手方法を定めた基準。肯定的確認、否定的確認、検証手続の相対的な強さを規定している。
  • 試査: 全集団のうち一部を選定して手続を実施する方法。肯定的確認でも試査(例:重要な顧客のみ確認)を使用する場合がある。
  • 金融機関への確認: 肯定的確認の最も一般的な適用例。預金残高、借入金、担保設定を同時に確認できる。
  • 代替手続: 肯定的確認の無回答時に実施する、別の監査手続。例:通帳の実査、銀行取引明細書の確認。
  • 売上高の立証: 肯定的確認が最初の選択肢となる重要な領域。顧客からの売上額確認は、被監査会社の請求書よりも信頼性が高い。

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