Definition
銀行確認を送ったのに3週間経っても回答が戻ってこない。催促しても反応がなく、代替手続に切り替えるしかないが、その証拠は確認回答より説得力が劣る。入所して最初の繁忙期に、この状況で調書をどう書けばいいのか分からず途方に暮れた経験がある人は少なくないだろう。
知っておくべき点
- 確認は監査人自身が管理する。被監査会社に確認状を作成させてはいけない - 回答がない、または満足のいく回答が得られない場合、代替手続が必要になる - CPAAOBの監査品質レビューでは、確認の対象範囲が過度に限定されている事例が繰り返し指摘されている - 確認状の発送から回答受領までのプロセス全体を、監査人が直接コントロールしなければならない
仕組み
確認は次の順序で進められる。監査人が確認対象者(銀行など)に直接確認状を送付し、回答者は被監査会社を経由せず監査人に直接返信する。この独立性が確認の価値である。
監基報330.27はこのプロセスを「監査人が第三者に直接照会し、その回答を監査人に直接返送するよう第三者に指示する」と定めている。一般的な確認には、銀行口座の残高・借入金の額についての正確性の確認が含まれる。顧客への売上が実在するか、仕入先との取引が実在するかという実在性の確認も同様に重要となる。
確認対象者が回答しない場合、監査人は代替手続を実施しなければならない。銀行確認なら、期末残高証明書ではなく会計帳簿に対する銀行取引明細書の突合せで証拠を得る。売上確認なら、売上後の入金の有無を確認し請求書の写しと売上記録を対比する。代替手続はより時間がかかり、より弱い証拠になる場合が多い。監基報330.32はこの点を明記している。
事例:磐田精工株式会社
被監査会社:磐田精工株式会社、静岡県磐田市、電気機械装置製造業、売上8,200万円、決算期2024年3月31日、IFRS適用。
ステップ1:確認対象の特定
売上債権2,100万円、有利子負債4,800万円(銀行借入)。監査人は金額ベースで売上債権の82%、借入金の全額を確認の対象として特定した。
文書化:確認計画表にて「確認対象金額の根拠:売上債権のISA 320パフォーマンス・マテリアリティ(150万円)の10倍超を基準」と記載。
ステップ2:確認状の作成と発送
監査人が自ら確認状を起案する。被監査会社の経営者に内容を知らせるが、確認状に署名させない。確認状には銀行宛と主要顧客3社宛がある。銀行には「2024年3月31日現在の当社の全借入金残高と担保状況、期限付き借入および将来の弁済スケジュール」の記載を求めた。
文書化:発送日と発送先一覧をExcelで管理。「確認状発送日:2024年5月15日。確認対象者:X銀行、Y銀行、顧客A社、顧客B社、顧客C社。」
ステップ3:回答の受領と照合
X銀行から2024年5月22日に直接回答を受け取った。記載金額4,800万円は帳簿残高と一致。担保状況(工場建物に第一順位の抵当権)も帳簿注記と合致した。Y銀行からは5月28日に回答があり、追加借入金300万円の存在が判明。被監査会社の帳簿には未計上だった。決算期後の事象だがパフォーマンス・マテリアリティ150万円を超えるため、経営者への確認と注記追加が必要となった。
文書化:回答書を原本で保管。突合表に「X銀行残高確認結果:帳簿残高4,800万円 ✓ 一致」、「Y銀行確認:300万円追加借入(決算期後イベント)。パフォーマンス・マテリアリティ超過のため要注記」と記載。
ステップ4:無回答への対応
顧客C社は期限内に回答しなかった。監査人は代替手続を実施し、2024年4月から5月の入金記録と売上記録を対比。請求額320万円に対し入金320万円を確認し、実在性を立証した。
文書化:代替手続の調書に「C社売上確認未回答のため、売上後の入金確認(タイムラグ考慮)により実在性を検証。請求日と入金日の対比表を別紙」と記載。
磐田精工の売上債権と借入金は、確認と代替手続の組み合わせにより十分な監査証拠が得られた。Y銀行で判明した期後の300万円借入については、経営者の同意を得て財務諸表注記に追加している。
監査人と実務家が陥りやすい誤り
CPAAOBの2024年度監査品質モニタリングでは、売上債権確認の対象を売上高の30%程度に限定し、残り70%を分析的手続や後続入金確認のみで監査している事例が指摘された。監基報330.27の「通常は説得力が高い」確認を過度に限定することで、証拠の質を低下させているという問題である。
本音を言うと、確認状を被監査会社に「渡して送ってもらう」という運用は今でも散見される。これは監基報330.27に明確に違反する。確認者の独立性を損なうため、監査人が直接郵送し、被監査会社が郵便を差し替える可能性を排除しなければならない。
確認が戻ってこない場合、多くの実務者は売上後の入金確認や帳簿対比だけで済ませがちである。代替手続は「同等の監査証拠」を提供するが、確認ほどの説得力はない。CPAAOBの指摘では、無回答件数が全体の10%を超える場合、まず確認対象の設定根拠を再検討すべきと述べられている。
確認と分析的手続の違い
確認は実在性と正確性の直接的な立証に適している。分析的手続は比率や傾向から合理性を検証するものであり、性質が異なる。売上債権なら、確認は「この売上は実在するか」に直接答える。分析的手続は「売上債権回転率が業界平均と大きく異なるか」を問うにすぎない。業界平均と異なるからといって確認は不要にならない。むしろ異常値が出た場合、確認で原因を突き止めるべきだろう。
関連用語
- 直接入手証拠 - 確認から得られる証拠の分類。監査人が直接対象者から得たもの。 - 監査証拠の説得力 - 確認の説得力が高い理由。独立した第三者から得たため。 - 代替手続 - 確認が取得できない場合の補填手段。 - 監査標本 - 確認の対象選定方法。全数か標本か。 - 売上の立証 - 確認が最も使われるシーン。 - 負債の完全性 - 確認による借入金検証の役割。
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