仕組み

ESRS データポイントは、CSRD要件と欧州持続可能性報告基準(ESRS)により詳細に規定されています。各データポイントは、企業が測定・報告すべき具体的な情報単位です。たとえば、温室効果ガス(GHG)排出量、従業員の男女比、水資源消費量といった指標が該当します。
監査人の役割は、企業が報告したデータポイントが基準の定義に従い、適切な測定・集計方法を使用して計算されているかを検証することです。限定的保証監査では、合理的保証監査(財務諸表監査)ほど詳細ではない手続を実施します。監査人は分析的手続、例示的テスト、管理者への質問を組み合わせて、データポイントが虚偽でないことを確認します。
ESRS基準は段階的に導入されており、第1段階(2024年報告、2025年監査開始)では12のESRS基準が対象です。第2段階では追加の基準が導入される予定です。監査人は、クライアント企業がどの段階に該当するか、どのデータポイントが監査対象かを事前に特定する必要があります。

計算例:Bergmann Maschinenbau GmbH

クライアント: ドイツの機械製造企業、2024年度会計年度、年間売上€28.5百万、CSRD第1段階対象。
背景: 同社は2024年度のサステナビリティ報告書を初めて発行し、ESRSに準拠した12のデータポイントを報告しました。その中でGHG排出量(スコープ1、2、3)が最大の監査リスク項目と特定されました。報告されたスコープ1排出量は年間480トンCO2相当でした。
ステップ1:データポイントの定義確認
ESRS E1-6「直接排出(スコープ1)」の定義に従い、どのようなエネルギー源と活動がスコープ1に含まれるかを企業の報告ガイダンスで確認しました。文書化ノート:ワーキングペーパーに、報告基準との対応表とスコープ分類の根拠を記載。
ステップ2:測定方法の検証
企業はスコープ1排出量をエネルギー請求書と燃料消費記録から計算していました。監査人は使用した排出係数(例:天然ガス1㎥あたり1.96kg CO2)がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の公開データベースと一致しているか確認しました。文書化ノート:使用した排出係数の出典と妥当性の評価結果を記載。
ステップ3:計算プロセスの例示テスト
12か月のうち3か月(1月、6月、11月)を選定し、以下を検証しました:(1)報告されたエネルギー消費量が請求書と一致する、(2)排出係数が適切に適用されている、(3)合計が正確に計算されている。検証は月次データファイルの遡及的レビューで実施されました。文書化ノート:サンプル月の計算式、使用データ、検証結果の一覧表。
ステップ4:報告値の評価
3か月のサンプルテストの結果、すべての計算が正確であり、報告値480トンは虚偽ではないと判断しました。ただし、スコープ3(サプライチェーン排出)に関しては、企業の定義が若干曖昧であったため、文書化の改善を推奨しました。文書化ノート:限定的保証の結論とクライアントへの指摘事項。
結論: データポイントの報告方法は ESRS に準拠しており、限定的保証監査の合意事項を満たしています。ただし、スコープ3の定義は次年度のデータ品質向上に向けて改善が必要です。

監査人と経営者が誤解すること

限定的保証レベルでは、監査人がすべてのデータ点検を実施することは期待されていません。むしろ、リスク基盤のアプローチで重要なデータポイントに焦点を当てます。ESRS 基準ではデータマテリアリティ(二重マテリアリティ)を基準に重要性を判断する必要があります。企業経営者が「すべてのデータを確認した」と期待していても、監査人の役割はそれより限定的です。
企業の財務コントローラーが「ISA 320 の重要性基準値をそのままサステナビリティデータに適用しよう」と考えることがあります。これは誤りです。ESRS データポイントのマテリアリティは二重マテリアリティの枠組みに基づき、財務的インパクトと企業外への影響(環境・社会への影響)の両面から判断されます。財務監査のマテリアリティとは異なる基準です。
ESRS データポイントは「基本的な」データポイントと「業種別の」データポイント、さらに「企業固有の」データポイントに分かれています。監査人が企業に割り当てられたデータポイントを正しく特定していない場合、監査範囲が誤ってしまいます。企業とともに初期段階で ESRS ナビゲーターを確認し、対象となる全データポイントを明確にすることが必須です。

  • 第1:データポイント監査は完全性監査ではない
  • 第2:財務監査の基準をデータポイントに適用しない
  • 第3:報告体系の階層化を見落とす
  • 第4:移行措置の適用範囲を誤解する ESRS 1第133項は初回報告年度に特定のデータポイント(例:バリューチェーン上のScope 3排出量)について段階的導入を認めている。監査人がこの移行措置を知らず、初年度から全データポイントの報告を要求するケースがある。

関連用語

  • 二重マテリアリティ - ESRS データポイントの重要性判断の基礎となる枠組み。企業自身への財務的影響と社会・環境への影響の両側面を考慮する。
  • CSRD - ESRS データポイントを規定する欧州指令。企業のサステナビリティ報告を義務付ける。
  • 限定的保証 - ESRS データポイント監査で一般的に提供される保証レベル。財務監査よりも低いレベルの保証である。
  • ESRS - ESRS データポイント定義の出典となる欧州基準。12のセクター横断的基準と業種別基準から構成される。
  • サステナビリティ保証 - ESRS データポイント監査を含む、企業の非財務情報に対する保証業務全般。
  • 開示要件とデータポイントの違い - データポイントが属する上位の開示要件との関係性を理解するための概念。

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