サンプリング計算機:一般監査向け | ciferi

監査人がサンプル数を決定する際に考慮すべき要素は、次の通りである。 母集団の特性: 監基報530.5は、監査人がサンプリングを計画する場合、監査手続の目的と母集団の特性を考慮しなければならないと定めている。母集団とは、テスト対象となる同じ特性を持つ項目の集合である。売掛金監査であれば、個別の売上取引が母...

計算機の仕組み

監査人がサンプル数を決定する際に考慮すべき要素は、次の通りである。
母集団の特性: 監基報530.5は、監査人がサンプリングを計画する場合、監査手続の目的と母集団の特性を考慮しなければならないと定めている。母集団とは、テスト対象となる同じ特性を持つ項目の集合である。売掛金監査であれば、個別の売上取引が母集団を構成する。給与監査であれば、各給与期間の給与支払が母集団である。母集団が大きいほど、また母集団内の項目の値が大きくばらついているほど、母集団全体に関する結論を得るためには大きなサンプルが必要になる。
許容可能なサンプリングリスク: 監基報530.6は、監査人がサンプリングリスクを許容可能な低い水準に抑えるために十分なサンプル数を決定しなければならないと述べている。サンプリングリスクとは、監査人がサンプルに基づいて下した結論が、もし母集団全体をテストしていたら下したであろう結論と異なる危険である。許容可能なサンプリングリスクが低いほど(例えば5%)、必要なサンプル数は増加する。許容可能なサンプリングリスクが高いほど(例えば15%)、サンプル数は減少する。
予想される虚偽表示の特性: 事前に虚偽表示が存在すると予想される場合、サンプル数は増加する。例えば、給与システムが大幅に変更されたばかりである場合、虚偽表示がある可能性がより高いため、より大きなサンプルが必要である。反対に、前年度まで虚偽表示が検出されず、内部統制が堅固である場合は、より小さなサンプルでも合理的な基礎が得られる。
本計算機は、これらの要素を入力値として受け入れ、統計的な公式を用いて必要なサンプル数を導き出す。計算結果は、監査ファイル内で監基報530の準拠状況を記録するための基礎となる。

監基報530における要件

サンプルの抽出: 監基報530.7は、監査人が母集団内の全てのサンプリング単位に抽出の機会が与えられるような方法でサンプルを抽出しなければならないと定めている。これは無作為抽出、体系的抽出、またはコンピュータによるランダム抽出を意味する。意図的なサンプル選択(「大きな項目を選ぶ」)は許容されず、これをサンプリングとして報告することはできない。
手続の実施と例外処理: 監基報530.10は、抽出したサンプルに立案した監査手続を実施できない場合、当該サンプルを虚偽表示として扱わなければならないと述べている。例えば、サンプルに選ばれた請求書が見つからない場合、その項目は虚偽表示と仮定してカウントする必要がある。代わりのサンプルを追加抽出し、元々予定していた手続を実施することもできるが、その場合は監査ファイルにその理由を文書化しなければならない。
虚偽表示の評価: 監基報530.11及び530.13は、監査人がサンプルで発見した虚偽表示から母集団全体の虚偽表示額を推定しなければならないと定めている。これは、単に見つかった虚偽表示をそのまま記録するのではなく、母集団全体への影響を推定する必要があることを意味する。例えば、売掛金1,000件の中から50件をサンプリングし、その中で3件の虚偽表示を発見した場合、虚偽表示率は6%である。この6%を母集団全体に適用すると、母集団全体の虚偽表示額は推定60件分となる。本計算機はこの推定を自動化し、推定虚偽表示額を許容虚偽表示額と比較する。

実務上の留意点

一般監査でサンプリングを適用する際は、次の点に注意する必要がある。
事例:資産管理株式会社の売掛金監査
資産管理株式会社(東京)は、企業向けコンサルティングサービスを提供する。2024年3月末時点の売掛金残高は4億8,000万円、1,200件の個別顧客請求で構成されている。監査人は売掛金の実在性と正確性をテストするため、サンプリングを計画した。
全体重要性(監基報320に基づく)を設定する。売掛金残高4億8,000万円に対して、全体重要性を4,800万円(1%)と設定した。これは金融庁の監査基準報告書320で推奨される範囲内である。
パフォーマンス重要性を決定する。監査人は通常、全体重要性の50~75%をパフォーマンス重要性とする。ここでは2,400万円(全体重要性の50%)とした。
サンプリングパラメータを入力する。本計算機に以下を入力:
計算機は必要なサンプル数を導き出す。この場合、約180~220件が必要と示される。
サンプル項目を抽出する。監査人は会計システムから全1,200件をエクスポートし、コンピュータによるランダム抽出で200件を選定した。各項目に通し番号を付与し、抽出ログをファイルに保管した。
監査手続を実施する。200件について、顧客への確認状(別紙監基報505ツール使用)、納品書との照合、請求額の再計算、代金回収記録の確認を実施した。その結果、以下を発見:
虚偽表示額を推定する。誤請求5件と取引なし2件の合計7件が実質的な虚偽表示である。200件中7件なので、虚偽表示率は3.5%。これを母集団1,200件に適用すると、推定虚偽表示額は約42件。各誤請求の平均額が120万円であるため、推定虚偽表示額は約5,000万円となる。
これはパフォーマンス重要性2,400万円を超えており、さらに調査が必要である。
追加テストを検討する。監査人はこの結果を受けて、以下を実施:
監基報530.11の評価。追加テストの結果、誤請求の原因が営業部門X部で使用される請求システムの単価マスタ誤りであることが判明した。この部門の全請求件数200件をすべてテストした結果、その中の28件が誤請求であった(虚偽表示率14%)。他部門からの虚偽表示率は1%未満。監査人は、サンプリング結果と追加テストの結果を統合し、虚偽表示額を再推定した。修正された推定虚偽表示額は約2,800万円となった。これはなおパフォーマンス重要性を超えているため、管理者に訂正を要求した。管理者が全28件を訂正したため、最終的には虚偽表示なしで意見を表明することができた。

  • 母集団規模:1,200件
  • 許容可能なサンプリングリスク:10%(一般的な監査環境では適切)
  • 予想虚偽表示率:3%(前年度の経験から、請求書の約3%に小額の記載誤りがあった)
  • 誤請求(請求額が正確でない):5件
  • 取引なし(顧客確認で否認):2件
  • 請求額は正確だが入金遅延(切り出し誤り):1件
  • 誤請求が発生した顧客グループの共通点を分析(例:海外顧客か、新規顧客か、特定の営業部門か)
  • その共通点を持つ全ての顧客への追加確認状を実施
  • 請求システムの設定を再検査し、誤請求の原因となったパラメータ設定誤りを特定