財務比率計算ツール:日本 | ciferi

日本の監査実務では、監基報520号が分析的手続の設計と実施を求めている。財務比率分析は、この要件を満たす最も実行可能な手法の一つだ。本ツールは、IFRS準拠またはJ-GAAP準拠の財務数値から、監査実務で頻出する11種類の比率を自動計算する。計算結果は、業界別の参照値(中央値、四分位数)と比較でき、異常...

概要

日本の監査実務では、監基報520号が分析的手続の設計と実施を求めている。財務比率分析は、この要件を満たす最も実行可能な手法の一つだ。本ツールは、IFRS準拠またはJ-GAAP準拠の財務数値から、監査実務で頻出する11種類の比率を自動計算する。計算結果は、業界別の参照値(中央値、四分位数)と比較でき、異常値の特定と調査に直結する根拠を提供する。
金融庁の監査品質モニタリングレポートでは、分析的手続の運用が監査品質の鍵であると繰り返し指摘されている。特に次の2点が重要だ:(1) 監査人が実際の結果を見る前に、独立した期待値を形成すること、(2) その期待値と実績の乖離を、具体的な根拠に基づいて調査すること。本ツールは両方に対応する。期待値は業界参照値から導き、乖離の大きさは数値で把握でき、その後の追跡調査の方針が明確になる。

使い方

ステップ1:業種を選択する


ドロップダウンから該当する業種を選ぶ。製造業、小売業、銀行業、保険業、不動産、医療、情報技術、エネルギー、建設、非営利法人、政府機関、運輸、宿泊飲食、農業の14業種に対応している。
業種の分類は、欧州銀行同盟が公開しているBACHデータベース(2023年度データ)に準拠している。日本の業種分類とEU分類に完全な対応がない場合は、売上高構成や経営資源の配置から最も近い業種を選ぶ。例えば、自動車部品メーカーは「製造業」に、百貨店チェーンは「小売業」に分類する。

ステップ2:財務数値を入力する


被監査会社の直近期末の財務諸表から、次の12項目を入力する:流動資産、現金及び現金同等物、流動負債、在庫、売上高、売上原価、純利益、総資産、総負債、自己資本、利息費用、営業利益。
すべての数値は円単位で入力する。IFRS準拠財務諸表の場合は、連結財務諸表から抽出する。J-GAAP単体決算の場合は、単体決算から抽出する。同じ会社でもIFRS版とJ-GAAP版で数値が異なる場合があるため、監査チームが使用する公式な決算数値を用いること。

ステップ3:計算を実行する


「比率を計算」ボタンをクリック。11種類の比率が自動計算される:流動比率、当座比率、売上総利益率、純利益率、株主資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)、負債資本比率、利息補償倍率、棚卸資産日数、売上債権回転日数、買入債務支払日数。

ステップ4:結果を業界参照値と比較する


計算結果は、選択した業種の参照値(第1四分位数、中央値、第3四分位数)と並べて表示される。参照値より低い比率は黄色でハイライトされ、調査の優先度を示す。

ステップ5:結果をエクスポートする


「監査調書としてエクスポート」をクリックしてWordファイルをダウンロード。監基報520号に基づくワーキングペーパーの雛形が出力される。各比率の計算式、使用した財務数値の出典、期待値(業界中央値)、実績値、乖離額、監査人の調査結論を記入する欄が用意されている。

監基報520号が求める分析的手続

期待値の形成


監基報520号第11項では、監査人は分析的手続の設計の際、財務情報に対する期待値を形成しなければならないと定めている。この期待値は、十分に信頼性のある情報から導かれ、その根拠が文書化される必要がある。
本ツールで表示される業界参照値(中央値)は、このような信頼性のある情報の一つだ。複数の国・企業から集計された参照値であれば、単一の会社の過去期推移よりも異常値検出の精度が高い。ただし参照値そのものが期待値ではない。期待値形成の過程で、参照値を出発点として、次の要因を考慮して調整する:
本ツールで参照値を確認した後、監査調書に「期待値形成根拠」欄を設け、参照値からの調整理由を記録する。これが監基報520号第11項への対応となる。

調査閾値の事前設定


監基報520号第6項では、実績値と期待値の乖離が「明白に有意な」場合、監査人はその差異を調査しなければならないとしている。「明白に有意な」の定義は、計画段階で定めておく必要がある。
通常、業種参照値の第1四分位数から第3四分位数の幅を、許容される変動として定める。この幅を外れた比率は「調査対象」となる。例えば製造業の流動比率なら、参照値がQ1 1.15、Q3 2.20の場合、1.15未満または2.20を超える流動比率を持つ会社は調査が必要だ。
本ツールは、入力値が参照値の幅を外れた場合、自動的にハイライトする。これにより、監査人は調査すべき項目が何かを一目で認識できる。

調査の文書化


監基報520号第8項は、調査結果の文書化を求めている。経営者への問い合わせ、得られた説明、その説明を支持する客観的証拠(試算表、請求書、契約書等)を並べて記録する。管理会計資料のみに頼ると、経営者の説明が実のところ根拠のない言い張りかもしれない。必ず、独立した証拠を求める。
本ツールがエクスポートするWordファイルには、「説明」「証拠」「結論」の3列が用意されている。各欄を埋めることで、監基報520号第8項への対応ができる。

  • 会社固有要因:規模、立地、成長段階。大規模メーカーと中小部品サプライヤーでは利益率が異なる。
  • 経営環境の変化:物価上昇、金利変動、為替変動。2023年度と2024年度の利息補償倍率が低下したなら、金利上昇が一つの説明となりうる。
  • 監査人の累積知識:過去期の水準、経営者の方針、業界動向。

よくある間違いと対応策

間違い1:期待値を実績から逆算する


計算結果を見てから「業界平均はおよそこのくらいだろう」と期待値を定めるのは、分析的手続としての意味を失わせる。実績値が5.2で、参照値の中央値が4.8だとわかった後に「期待値は5.0とする」と定めれば、ほぼすべての会社が「期待値通り」となる。これは監査論上の欠陥だ。
対応策:本ツールの参照値を確認する前に、監査調書の「期待値」欄を埋める。その後で実績を入力し、ツールが乖離を表示させる。この順序を逆にしない。

間違い2:調査閾値を設定しない、または設定値が広すぎる


「流動比率が少し下がったのは、時期的な要因かもしれない」という曖昧な判断で、ハイライトされた項目を無視するのは危険だ。閾値を事前に定めていなければ、監査人の都合で調査対象を恣意的に選別できてしまう。
対応策:計画段階で「流動比率が参照値の第3四分位数を20%超過して外れた場合、調査する」というルールを定める。本ツールに目安が示されているなら、それをベースに、特に重要な比率はより狭い閾値(10%等)を設定する。実績確認時には、このルールに機械的に従う。

間違い3:経営者の説明を、独立した根拠なしで受け入れる


「売上債権回転日数が業界平均より20日長い理由は、大型案件の決済がまだだから」という説明を記録して、「説明を得た。問題なし」と結論するのは、監基報520号第8項への違反だ。
対応策:説明を聞いた後、その説明が事実かどうかを確認する証拠を求める。大型案件があるなら、契約書と請求日、決済予定日を見る。売掛金台帳の主要債務者を確認する。決済がまだなら、その日付を記録する。この作業があれば、「結論:大型案件Aの決済は〇月〇日予定。売上債権回転日数の延伸は正当。」と確信をもって書ける。

間違い4:全業種に対し同じ比率セットを機械的に適用する


銀行業の売上債権回転日数は0(金融機関では応収利息が存在するが、伝統的な売上債権ではない)。農業の利息補償倍率は参照値が非常に低い(個人農家や小規模農業法人では借入が多く、純利益が変動しやすい)。こうした業種特性を無視して、すべての業種に同じ分析を当てはめると、無意味な「差異」を追跡することになる。
対応策:本ツールで業種を選ぶ際、参照値の欄をよく読む。該当業種で該当比率の参照値が0または著しく異なる場合は、その比率は調査対象から除外する。エクスポートされたWordファイルの該当セルに「当業種では本比率は非該当」と記入する。

間違い5:予算値との比較にのみ頼る


会社が事前に立てた予算値と実績の乖離を調査するのは、経営分析としては重要だ。しかし監査の分析的手続では、外部の業界参照値との比較も同様に重要だ。予算値は経営者が作成したものであり、その信頼性も評価対象となるため。
対応策:本ツールで業界参照値との比較を完了した後、別途、予算値との比較を行う。乖離が説明できるかどうかで、両者の情報価値は異なる。予算から乖離していても業界参照値の範囲内なら、経営環境の変化として説明可能。予算から乖離し、かつ業界参照値からも外れていたら、追跡調査の優先度は上がる。

金融庁の指摘事項

公認会計士・監査審査会(CPAAOB)は、2023年度及び2024年度のモニタリング結果において、分析的手続の運用に関する指摘事項を公表している。本ツールの使用を通じて、これらの指摘を回避する方法を示す。
指摘1:期待値形成が不十分
多くの事務所では、業界平均値を参照値としながらも、その値と実績値の乖離が何を意味するかを十分に検討していない。金融庁の指摘では「期待値は単なる比較対象ではなく、監査人が形成した『こうあるべき値』であるべき。その根拠が監査調書に明記されていない事務所が散見される」と述べられている。
本ツールで参照値を確認した後、「期待値形成根拠」欄に次の情報を記入することで、この指摘に対応する:選択業種、参照年度、参照値がQ1・中央値・Q3のいずれか、会社固有要因(規模、立地等)による調整、調整後の期待値。
指摘2:乖離の調査が表面的
実績が参照値から外れていることを確認しながら、経営者に「なぜ低いのか」と聞いて、得た説明をそのまま記録して終わりにする事務所が指摘されている。説明の真偽を確認する客観的手続がない。
対応策:本ツールでハイライトされた比率について、次の手順を踏む:(1) 経営者への問い合わせ、(2) 説明の要点を記録、(3) 説明を支持する証拠(試算表、契約書、銀行残高確認書等)の収集、(4) 証拠と説明が整合しているかの検証、(5) 最終的な監査結論。この全プロセスを監査調書に残す。
指摘3:調査閾値が事後的に決定される
実績を見てから「この程度なら許容範囲」と判断するのは、監査の客観性を損なう。計画段階で調査対象を決めていないと、監査人の判断の一貫性が問われる。
対応策:リスク評価段階で、選択した業種ごとの調査閾値を定める。本ツールの参照値から、Q1とQ3の幅の20%外側を調査対象とする等のルールを事務所で統一する。その後、実績が確定したら機械的にこのルールを適用する。その結果として調査が必要なら調査し、不要なら記録する。このプロセスが、監査品質のための「歯止め」となる。

業種別の注意点

製造業


在庫日数と売上債権回転日数が長く、資本集約的である。売上高に対し総資産が大きいため、ROAは相対的に低くなる傾向がある。本ツールで製造業を選んだ場合、ROAの参照値の中央値は4.5~5.0%程度だ。これを単純に「利益性が低い」と解釈しないこと。製造業はそれが業種特性だ。
むしろ注意すべきは、会社固有の要因による乖離だ。例えば、工場の遊休資産化(生産能力が落ちているのに資産がまだある)で総資産は高いままなのに利益が減少すれば、ROAは急落する。この場合、「なぜ工場が遊休化したのか」「今後の事業戦略は何か」を追跡する価値がある。資産の回収可能性評価(IAS 36 / 企業会計基準第15号)に関わる重要な情報となるため。

小売業


流動比率と当座比率が製造業より低い(参照値が各々中央値1.15と0.50)。商品回転が速く、日々現金を回収する商売であり、負債も短期が多いため、流動性の見方が異なる。営業キャッシュフロー(OCF)の状況が、貸借対照表の流動比率よりも重要だ。
本ツールでは流動比率がハイライトされても、小売業の場合は過度に心配する必要がない。むしろ、営業キャッシュフロー(入力した財務数値にOCF項目を追加できれば)を確認し、実際に現金が回っているか、仕入先への支払い遅延がないか、を追跡すること。

銀行業と保険業


金融機関については、本ツールで計算できる比率のうち、在庫日数・売上債権回転日数・買入債務支払日数は0が参照値となる。これらは金融機関のビジネスモデルと関連がないため、無視する。代わり、利息補償倍率(営業利益÷利息費用)と負債資本比率(総負債÷自己資本)が重要だ。
金融機関の自己資本規制(バーゼルIII、金融庁の規制基準)では、負債資本比率が高く(参照値が中央値10倍)設定されている。これが業種特性であり、5倍の製造業と比較して「危ない」と判断するのは誤りだ。

不動産業


賃貸物件の保有を事業とする企業の場合、ROEとROAの参照値が相対的に低い(各々中央値8.0%と3.0%)。これは物件評価の方法(取得原価か時価評価か)や減価償却方法(定額法か定率法か)に左右される。本ツールで不動産を選ぶ場合、参照値はEU企業(IFRS適用企業が多い)のデータであり、日本の不動産企業(J-GAAP適用の小規模企業が多い)と会計処理が異なる可能性がある。
この場合、参照値より低いROAやROEが出た場合も、直ちに「利益性が悪い」と判断しない。むしろ、物件の含み益(時価と帳簿価額の差)や、テナント品質(契約年数、家賃滞納率)を別途確認する必要がある。分析的手続の限界を理解した上で使用すること。

政府機関と非営利法人


これらの業種では、利益概念が民間企業と異なる。政府機関の場合、予算額と支出額が「利益」の代わりになる。非営利法人の場合、寄付金や補助金が主要な収入源であり、営業利益は負数になることが普通だ。
本ツールで政府機関や非営利法人を選ぶ場合、純利益率やROE、ROAの参照値が負数またはゼロになっている。これは警告ではなく、業種特性だ。代わり、流動比率(現金を確保できているか)と負債資本比率(借入金が過剰でないか)を優先的に確認する。

企業会計基準との対応

本ツール計算の基礎となる財務数値は、J-GAAPまたはIFRS準拠の財務諸表から抽出されることを想定している。2つの会計基準では、同じ項目でも定義と測定方法が異なり、結果として比率の値が変わることがある。監査人はこの違いを認識した上でツールを使用する必要がある。

在庫の評価


J-GAAPでは最終仕入原価法(LIFO)が認められるが、IFRSでは認められない(IAS 2)。インフレ環境下でLIFO法を使う会社の売上原価は低くなり(古い単価で評価)、売上総利益率は高くなる傾向がある。同業他社がIFRS適用でFIFO法を使っていれば、純粋な経営効率の比較ができない。
本ツールで比率を計算する前に、被監査会社と参照企業の在庫評価方法が同じかどうか、確認する。異なれば、「在庫評価方法の違いにより直接比較不可」と監査調書に記入する。必要に応じ、統一的な評価方法での再計算を検討する。

のれん(Goodwill)の償却


IFRSではのれんは償却されず、毎期減損テスト(IAS 36)が行われる。J-GAAPではのれんは20年以内で規則的に償却される(企業会計基準第21号)。この違いにより、営業利益と純利益が、同じグループの会社でもJ-GAAP版とIFRS版で異なる。
子会社統合企業を監査する場合、親会社がJ-GAAP、子会社がIFRSという混在環境が起こりうる。本ツールで比率を計算する際は、連結財務諸表または個別財務諸表のいずれを使用しているか、明記する。

リース取引


IFRS 16(企業会計基準第22号)により、リース資産と使用権資産がバランスシートに計上されるようになった。これにより、総資産が増加し、総負債も増加する。結果として、ROA(総資産利益率)と負債資本比率の両方が変動する。
旧会計基準(IFRS 17施行前、またはJ-GAAP旧基準での他責財務諸表)と新会計基準の間で、これらの比率を比較する場合は注意が必要だ。「負債資本比率が悪化したのではなく、会計基準が変わっただけ」という可能性がある。

監査調書への組み込み

本ツールでエクスポートされたWordファイルは、監基報520号に基づくワーキングペーパーの雛形となる。これを監査調書ファイルに組み込む方法を示す。

ファイル命名規則


エクスポート後のWordファイルは、以下の形式で保存する:
「FA-520_分析的手続_比率分析_<会社名>_<監査年度>」
例:「FA-520_分析的手続_比率分析_東海製作所株式会社_2024年3月期」

監査ファイル内での位置付け


本ワーキングペーパーは、監査ファイルの「完了段階」セクション(Completion Phase)に配置する。監基報520号では、完了段階の分析的手続は必須要件だからだ(第5項)。
配置例:

記入例(東海製作所株式会社、2024年3月期)


以下は、本ツールを用いた実際の記入例を示す。数字はあくまで設例であり、実在する会社のデータではない。
計算入力:
計算結果:
監査調書への記入:
期待値形成根拠
東海製作所は大規模自動車部品メーカー(従業員数380名、売上高42億円)。業種は製造業。参照値は欧州BACH 2023データベース製造業部門から抽出。東海製作所は北東アジア市場(日本、韓国)での販売比率が高く、欧州企業より在庫日数が短い傾向にある(リードタイム短縮)。したがって、売上総利益率については、参照値中央値32%から、競争環境の激化により2-3%低下して29-30%程度を期待値とする。その他の比率は参照値を期待値とする。
調査結果
売上総利益率の乖離(実績25.0% < 期待値29-30%)
調査:経営者に売上総利益率の低下について質問。得られた説明は、「2024年1月-3月に、大手自動車メーカーD社向けの単価値下げが発生した。金額ベースで約8,000万円。D社向け売上が全体の28%を占めるため、全体の利益率に影響が生じた」との説明。
根拠確認:
結論:売上総利益率の低下は、D社への契約値下げによる影響と特定される。これは一時的な要因(単一大手顧客との契約更新に伴うもの)であり、経営上の問題とは言えない。今後の見通しについては、D社向けの2024年4月-6月の値下げ継続により、さらに利益率が低下する可能性がある。経営者に来期の利益計画の妥当性を別途レビューすることを推奨。
ROE と ROA の上昇(期待値を超過)
実績ROE 16.9% > 期待値12.0%。実績ROA 6.8% > 期待値4.5%。いずれも参照値を上回る。
調査:経営者に、同業比較で利益性が良好な理由を質問。説明:「当社は高付加価値製品(電動パワーステアリング部品)への販売シフトを、過去3年かけて進めた。標準部品(ハーネス等)から高付加価値品への売上構成比が、3年前の32%から現在の48%に上昇。これが営業利益の増加につながっている」。
根拠確認:
結論:ROEとROAの上昇は、経営戦略の効果(高付加価値製品へのシフト)を反映している。今後もこのトレンドが続くかどうかは、業界動向(電動化需要)と当社の受注競争力に依存。来期以降も継続的に製品別利益率と売上ミックスをモニタリングすることを推奨。

  • A リスク評価段階
  • A-1 業種及びビジネス環境の理解
  • A-2 内部統制の評価
  • B 実証手続段階
  • B-1 売上高
  • B-2 売掛金
  • C 完了段階
  • C-1 完了段階の分析的手続(本ワーキングペーパー)
  • C-2 監査調書の最終レビュー
  • C-3 不正や違法行為の識別
  • 流動資産:85,000万円
  • 現金及び現金同等物:12,000万円
  • 流動負債:52,000万円
  • 在庫:28,000万円
  • 売上高:420,000万円
  • 売上原価:315,000万円
  • 純利益:18,900万円
  • 総資産:280,000万円
  • 総負債:168,000万円
  • 自己資本:112,000万円
  • 利息費用:1,800万円
  • 営業利益:22,500万円
  • 流動比率:1.63(参照値中央値 1.55)
  • 当座比率:1.10(参照値中央値 1.05)
  • 売上総利益率:25.0%(参照値中央値 32.0%)
  • 純利益率:4.5%(参照値中央値 4.5%)
  • ROE:16.9%(参照値中央値 12.0%)
  • ROA:6.8%(参照値中央値 4.5%)
  • 負債資本比率:1.50(参照値中央値 1.05)
  • 利息補償倍率:12.5(参照値中央値 5.5)
  • 棚卸資産日数:25.9日(参照値中央値 65日)
  • 売上債権回転日数:31.4日(参照値中央値 55日)
  • 買入債務支払日数:32.6日(参照値中央値 45日)
  • D社との契約書を確認。契約日2023年11月、値下げ幅3.5%。有効期間は2024年1月-6月と明記。
  • 2024年1月-3月の月次売上を確認。D社向けの売上額の推移を計算。
  • 値下げ前の販売価格と値下げ後の販売価格から利益への影響を計算。税理士作成の月次P/Lで確認したところ、見積りの8,000万円に対し、実績が7,950万円だった。
  • 過去3年の製品別売上を、会計システムから抽出。電動パワーステアリング関連の売上が、2022年度26億円から2024年度20.2億円へと増加(売上全体に占める割合が32%から48%に上昇)。
  • 製品別利益率を計算。電動パワーステアリングは利益率14.5%、標準部品は利益率8.2%。製品ミックスの変化が全体利益率に正の影響を与えている。
  • 営業利益の増加22.5億円は、過去期実績(2023年度20.0億円)より12.5%増加。増分12.5億円のうち、製品ミックス効果が約8.0億円、販売数量増が約4.0億円と分析。

完了段階での義務

監基報520号第5項は、監査人は完了段階で分析的手続を実施することを定めている。これは選択的ではなく、全ての監査業務での必須要件だ。本ツールを使用することで、この要件に機械的に対応することは可能だが、監査的判断は軽減されない。
完了段階の分析的手続は、以下の目的を持つ:
本ツールで比率を計算し、異常値をハイライトしたら、次のステップを必ず実行する:

  • 監査チーム全体の意見が矛盾していないか確認する。
  • 残存する未解決の監査上の問題を表面化させる。
  • 異常な取引や金額が、見逃されずに調査されたか確認する。
  • 財務諸表全体の妥当性に対する最終的な判断を支援する。
  • 各ハイライト項目について、当該科目の監査調書を参照し、既に実施した監査手続の記録を確認する。
  • 期中の監査手続で既に調査済みの異常値なら、監査調書への相互参照を記入する。
  • 本ツール計算時点で初めて発見された異常値なら、その原因を直ちに調査し、是正または説明を得る。
  • 最終的に、全ての異常値について「調査済み」「説明可能」「重要性以下」のいずれかの結論を得る。

関連するツールと利用時の注意点

重要性計算ツール(Materiality Calculator)


本ツール(比率分析)と組み合わせて使用することで、監基報320号に基づく監査計画の品質を高める。比率分析で発見された異常値の大きさを、重要性の水準と照らし合わせることができるから。
例えば、売上総利益率が期待値から3%低い場合、その金額影響を計算する。売上高42億円 × 3% = 1.26億円。これが監査の重要性(通常、売上高の2-5%)を超えるかどうかで、調査の必要性が判定できる。

ISAE 3402ワークシート(サービス提供者監査用)


被監査会社がサービス提供者(給与計算代行、経理代行等)を使用している場合、ISAE 3402の限定的保証報告書を入手する。当該サービス提供者の内部統制が有効に機能していれば、本ツールで計算した比率の信頼性を高める根拠となる。逆に、サービス提供者の内部統制に欠陥があれば、本ツールの数値に対する懐疑的態度を保つ必要がある。

継続企業前提の評価チェックリスト


本ツール(特に流動比率、利息補償倍率、負債資本比率)の計算結果は、監基報570号の継続企業評価を直接支援する。流動比率が低下傾向、利息補償倍率が低下、負債資本比率が高い、といった複数の指標が同時に現れた場合、経営環境の悪化を示唆する可能性がある。その場合、経営者に対し、継続企業前提の妥当性を再度検討するよう求める重要な根拠となる。

トラブルシューティング

Q1:計算結果が業種参照値と大きく異なる。これは異常か、業種選択が間違っているか。


A:両方を確認する。(1) 業種選択を見直す。小売業と卸売業は異なり、金融機関と保険業は異なる。貴社の会社が本当にその業種か、主要売上の内容から確認する。(2) 業種が正しい場合、異常値は調査対象。経営者に説明を求め、会社固有要因(事業戦略の転換、特大顧客の獲得/喪失等)を確認する。

Q2:被監査会社がJ-GAAP決算とIFRS決算の両方を公表している。どちらを入力すべきか。


A:監査の対象となっている決算基準を使う。日本の上場企業なら、金融商品取引法に基づくIFRS任意適用前まではJ-GAAPが主流。適用後はIFRSが基準。被監査会社の監査契約書または監査計画書で、対象となる決算基準を確認する。

Q3:財務諸表の数字を入力しても、計算結果が出ない。


A:入力値の形式を確認する。本ツールは、全て数値(負数は-で記入)を想定している。カンマやテキストが混在していないか。また、小数点が含まれていないか(本ツールは万円単位を想定)。再度入力して試す。

Q4:参照値が異なる複数のバージョンのツールを見かけた。どれが正式か。


A:ciferiの公式ウェブサイト(https://ciferi.com/ja-JP/financial-ratio-calculator/australia)から直接アクセスしたツールが正式版。参照値は毎年更新される(例:2023年度データを使用)。ダウンロードしたファイルやスクリーンショットは、時間経過で陳腐化する可能性があるため、常に公式サイトで最新版を確認する。
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