重要なポイント

  • 仕訳テストは経営者による無効化リスクへの対応としてすべての監査業務で必須
  • 選定基準は 44の不正特性を標的とし、金額閾値のみでは不十分
  • 全母集団(連結仕訳・トップサイド調整を含む)の取得が手続の前提条件

仕組み

ISA 240.32(a)は、仕訳の適切性をテストするよう監査人に義務づけています。これは任意の手続ではない。経営者による内部統制の無効化リスクへの対応に位置づけられ、このリスクはすべての監査業務で反証不能な推定リスクです。

手続は二段階で構成される。第一に、財務報告に関与する者への不正な活動についての質問(ISA 240.A43)。第二に、不正の特性に基づく選定基準で仕訳を抽出してテストする(ISA 240.A44)。選定基準には、報告期間末近辺の仕訳、通常は仕訳を入力しない者による仕訳、通常使用されない勘定への仕訳、端数のない金額、末尾の一致するパターン等が含まれる。

テストを開始する前に、仕訳とその他の調整(連結仕訳、トップサイド調整、手動の期末仕訳を含む)の全母集団を取得する必要がある。金額の閾値のみで仕訳を選定するアプローチは、ISA 240.A44が求める不正の特性を標的とした基準を満たさない。経営者による無効化は金額ベースの検出を回避するように行われることが多いためです。

実務例:Peeters Holding N.V.

クライアント:ベルギーの持株会社、FY2024、連結売上高EUR 210M、IFRS適用。連結調整仕訳はExcelで手作業により作成されている。

ステップ1:全母集団の取得

チームは子会社の仕訳38,200件と連結調整仕訳142件を含む全母集団を取得する。文書化ノート:「全母集団はERPシステムのジャーナルダンプと連結用Excelスプレッドシートから構成。元帳と一致を確認。」

ステップ2:選定基準の設定

ISA 240.A44に基づき、企業のリスクプロファイルに合わせた6つの選定基準を定義:(1) 12月26日以降に入力された仕訳、(2) 経理部門外の者が入力した仕訳、(3) 収益勘定への貸方仕訳で相手勘定が営業費用勘定、(4) EUR 100,000を超える端数なし金額、(5) 連結調整仕訳のうち説明が空欄のもの、(6) 日曜日に入力された仕訳。

ステップ3:テストの実施

83件の仕訳を抽出しテストする。4件の連結仕訳(合計EUR 380K)が、文書化された業務上の理由なく営業費用を再分類していた。チームは追加調査を実施し、所見をガバナンスに報告する。

結論:選定基準がISA 240.A44の不正特性を標的としており、金額閾値のみに依存していないため、手続はISA 240.32(a)の要件を充足している。

よくある誤解

  • 金額閾値のみでの選定 FRC 2022年所見は、ISA 240.A44の不正特性に基づく選定基準を考慮せず、金額閾値のみで仕訳を選定したチームを指摘した。経営者による無効化は金額ベースの検出を回避するよう行われることが多い。
  • 「その他の調整」の見落とし チームは総勘定元帳の仕訳をテストするが、連結仕訳・トップサイド調整・手動の期末仕訳といった「その他の調整」を見落とすことが多い。ISA 240.32(a)はこれらも対象に含めている。
  • 選定基準の根拠の未説明 検査所見で最も頻繁に指摘されるのは、特定の選定基準を採用した理由がファイルに記載されていないケースである。ISA 240はリスクプロファイルに合わせた基準の設定とその根拠の文書化を求めている。
  • 全母集団の網羅性の未確認 仕訳テストの前提は全母集団の取得である。ERPから抽出したジャーナルデータが元帳と一致するかを確認せずにテストを開始すると、母集団が不完全なまま手続を実施するリスクがある。

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