Definition

ISAE 3410の業務契約書を読んで、買い手の要件欄が「ESGリスク全般」とだけ書かれていたことはないだろうか。枠組みの定義が曖昧なまま限定的保証業務に着手するファイルは、CPAAOBの検査で繰り返し指摘されている。

仕組み

サステナDDは、財務DDの一部として実施されることもあれば、スタンドアロンの業務として依頼されることもある。監査人が関与する場合、ISAE 3410に基づく限定的保証として設計する。買い手が評価したい項目は案件ごとに異なるが、経験上よく出てくるのは炭素排出量の正確性、サプライチェーン下流の強制労働リスク、規制当局による環境違反の未解決事項、そして税務透明性の遵守状況である。

ISAE 3410.A9に基づき、監査人は準拠の枠組みを特定する。GRI基準、ESRS、業界固有の基準(鉱業ではICSMMなど)、または買い手が定義したカスタム指標のいずれかになる。正直なところ、買い手の内部要件が枠組みになっている場合が一番厄介である。それを監査に耐える形で文書化し、契約に含める作業が発生するからだ。

限定的保証は、買い手に「十分な確信」ではなく「一定の確信」をもたらす。ISAE 3410では、合理的保証よりも少ない範囲のテスト手続を実施する。たとえばカーボン排出量について「企業報告書で述べられているとおりである可能性が高い」という結論に達する。「である」ではない。「ある可能性が高い」。この差は買い手にとって意外なほど大きく、事前にこの限定を理解していない買い手との間でトラブルになる。

実例:テーラー・テキスタイル・バルセロナ S.L.

クライアント:スペインのテキスタイル製造業者、2024年度、年間売上€28M、従業員680名、IFRS報告者、CSRD対象企業(大規模企業要件を満たす)

買い手:フランスの製造持株会社、テーラー・テキスタイル・バルセロナの80%取得を検討中

ステップ1:枠組みの定義 買い手とテーラー・テキスタイル・バルセロナは、ESRS E1(気候変動)およびESRS S1(労働慣行)に対する準拠をDD対象とすることに合意した。Scope 1・Scope 2の排出量がESRS E1.41にしたがって計算されていること、仕入先のメンテナンス工場がILO労働基準(児童労働禁止・団結の自由)に準拠していることを確認する。 調書への記載:DD契約書にESRS E1.41とILO基準の段落番号を明記。枠組みが「例示的」か「網羅的」かを明確にする。

ステップ2:重要性閾値の設定 買い手は「重要な欠陥」を次のように定義した: - 報告されたScope 1排出量が実績から±5%超の乖離 - 30名以上の従業員が配置される下流工場で、児童労働問題の未解決記録が存在する

調書への記載:買い手の閾値設定根拠を監査調書に記載。「なぜ5%なのか」「なぜ30名なのか」の経済的正当性を買い手とともに定義し、契約に含める。

ステップ3:証拠収集 監査人は以下を実施した: - テーラー・テキスタイル・バルセロナの2024年版サステナビリティレポート(ESRS開示)を取得 - Scope 1排出量の計算式および基礎データ(燃料請求書、ガス使用量メーター記録)をサンプルテスト - 仕入先リスト(45社)から無作為に10社を選定し、各社の最新ILO労働監査報告書を要求 - 取得できなかった1社について、テーラー・テキスタイル・バルセロナの購買部門に非準拠状況を確認

調書への記載:各テスト段階で「取得した証拠」「テストした件数」「発見した不一致」を記載。限定的保証であることを念頭に、評価コメント(「これは重大か」)と事実(「これは見つかった」)を分ける。

ステップ4:不一致の評価 監査人は以下を発見した: - Scope 1排出量:報告値42,800トンCO2相当。計算テストで41,200トン。乖離率2.7%(閾値5%以内)。準拠と判定。 - Scope 2排出量:再計算結果18,400トン。報告値19,100トン。乖離率3.7%。準拠と判定。 - 仕入先のうち8社は完全なILO労働監査報告書を提出。1社は2024年報告書がなく2023年報告書のみ提出(閾値±30名規模、この工場には45名が勤務)。買い手にとって「古い報告書は容認するか」は買い手判断。監査人は不一致を報告。1社は報告書を提出できず、テーラー・テキスタイル・バルセロナは「この工場は2025年4月に閉鎖予定のため、監査不実施」と説明。買い手に報告。

調書への記載:「限定的保証」であることを強調。「すべてを検査した」ではなく「実施した手続の範囲内で、以下の不一致を発見した」と文言を使い分ける。買い手の判断が必要な不一致(古い報告書の容認、閉鎖予定工場の扱い)は、事実と買い手の選択肢をともに記載。

ステップ5:結論の表現 監査人の結論:「テーラー・テキスタイル・バルセロナが公表したESRS E1準拠への陳述は、当定義の枠組みに準拠しているものと思われる。S1準拠では、仕入先サンプル内で1つの古い監査報告書不一致があり、1つの工場で報告書が未取得である。これらの事項が買い手の投資判断に与える影響の評価は、買い手の責任である。」

限定的保証の言い回し(「ある可能性が高い」)と、買い手責任の明記は必須。監査人が「推奨する」「懸念する」という言葉は使わない。

実務者が見落としやすい点

CPAAOBの検査事例集(2024年)では、DD業務に関わる監査人が買い手の要件を「監査人が設定すべき基準」と誤解し、ISAE 3410.A9で求められる「買い手が定義した枠組み」を調書に残していないケースが指摘されている。現場の感覚で言うと、買い手のスプレッドシート指示やメールが「枠組み」として扱われ、監査ファイルで正式に合意されていないという状態である。これが繁忙期に最もレビューノートが集まる箇所だ。

限定的保証と合理的保証の相違が報告書で不明確になるケースも多い。監査人が「全サプライチェーン30工場を確認した結果、すべて準拠と結論付けた」と書くと、合理的保証に見える。限定的保証では「対象サンプルの結果に基づき、重要な不準拠は見つからなかった」と書く。相違は言い回しにある。

買い手の要件が複数ある場合(Scope 1、Scope 2、児童労働、多様性)、監査人が「すべてをカバーした」と記載する調書が多い。実際には、限定的保証の範囲は買い手と事前に絞り込むべきだろう。「今回はScope 1とScope 2のみ対象。児童労働・多様性は次のプロジェクトで」と明記することで、後発的な要件追加による紛争を回避できる。

関連用語

- ISAE 3410:DD業務を規律する国際基準。限定的保証の枠組みを定める。 - 限定的保証:監査人の結論が「ある可能性が高い」という水準。合理的保証より低い。 - 合理的保証:財務監査で提供される水準。「である」という肯定的な結論。 - 準拠の枠組み:監査対象事項が評価される基準(GRI、ESRS、カスタム指標など) - 重要性:DD文脈では、買い手が「報告してほしい」欠陥の大きさを定義

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該当なし(このテーマ向けの ciferi 計算ツールは現在ありません)

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