移転価格ツール:ドイツ | ciferi
ドイツは、ヨーロッパにおいて最も厳格な移転価格規制を有する国の一つである。法律の根拠は 外国税法(Außensteuergesetz, AStG)第1条 であり、国境を越えた関連当事者間の取引は独立当事者間価格(アームズレングス価格)で設定されなければならない。ドイツは公式にはOEECD移転価格ガイドラ...
ドイツの移転価格体系
ドイツは、ヨーロッパにおいて最も厳格な移転価格規制を有する国の一つである。法律の根拠は外国税法(Außensteuergesetz, AStG)第1条であり、国境を越えた関連当事者間の取引は独立当事者間価格(アームズレングス価格)で設定されなければならない。ドイツは公式にはOEECD移転価格ガイドラインに従うが、同時に利得配分文書記録令(Gewinnabgrenzungsaufzeichnungsverordnung, GAufzV)および利得配分に関する行政基本原則(Verwaltungsgrundsätze Verrechnungspreise, VWG VP)として、より詳細な国内法制・行政指針を備えている。
金融庁および日本公認会計士協会が発行する監査基準報告書と同様に、ドイツの租税当局(Bundeszentralamt für Steuern, BZSt)も四分位範囲(第25パーセンタイル~第75パーセンタイル)の方法論を採用している。これはOECD基準と一貫している。
文書化要件
ドイツの特徴は、全ての国境を越えた関連当事者間取引に対する、例外なしの文書化義務である。取引額の大小を問わず、文書を準備しなければならない。
文書は以下の要件を満たす必要がある:
準備が不十分な場合、租税当局は立証責任を逆転させることができる。つまり、納税者が自社の設定価格がアームズレングス価格であることを証明できなければ、当局が独自に価格を推定する権利を持つ。
- 作成言語: ドイツ語(英語による補足資料は受け入れられる)
- 準備期限: 税務申告書提出期限から6か月以内。臨時的な取引(例えば事業再構築、知的財産の移転)の場合は、取引発生から6か月以内
- 提出期限: 税務署(Finanzamt)からの請求があった場合、60日以内に提供する必要がある
- 構成: OECD第V章の枠組みに従い、親会社ファイル(Stammdokumentation)および現地ファイル(Landesspezifische Dokumentation)の両方を準備する。連結売上高が7億5,000万ユーロを超える企業グループの場合、国別報告(Country-by-Country Reporting)も必須である
罰則体系
ドイツの罰則は、ヨーロッパにおいて最も厳しいものの一つである:
特に注目すべきは、実際の価格設定がアームズレングス価格であっても、文書が存在しないまたは不十分であれば罰則が適用されるという点である。これは単なる「ペナルティ回避のため」ではなく、コンプライアンス文化が強く定着していることを示している。
- 文書化の不備がある場合: 移転価格調整額の5~10%の追加税(最低5,000ユーロ)
- 文書の遅延準備: 1日あたり100ユーロ(上限なし)
- 立証責任の逆転: 文書が不十分であれば、租税当局が当該調整額を推定できる
関数の移転(Funktionsverlagerung)
ドイツで特に重要な概念が、関数の移転である。AStG第1条第3b項は、機能、リスク、および関連資産(無形資産を含む)がドイツから域外へ移転される場合、当該移転には「出国税」(exit tax)が課される規定を設けている。
例えば、ドイツの親会社がポーランドの子会社に生産機能を移転する場合、当該子会社の収益力に基づいて、移転された関数に対する対価を支払う必要がある。この対価は、予想される将来の利益に基づいて算定される。これは国際的な移転価格基準にはない、ドイツ固有の要件であり、事業再構築時に極めて大きな税務エクスポージャーをもたらす。
仮定的アームズレングス価格テスト
AStG第1条第3a項は、比較可能なデータが不十分な場合に、仮定的アームズレングス価格を適用する規定を置いている。このテストでは、売り手が受け入れられる最低価格と買い手が支払う可能性のある最高価格の範囲を考慮する。アームズレングス価格は、原則として当該範囲の中央値である。納税者が異なる地点での設定を正当化できない限り、中央値を使用する。
租税調査のトリガー
ドイツの租税当局が移転価格調査を開始する際の典型的な兆候は、以下の通りである:
- 租税申告書上に記載される有意な関連当事者間取引
- 事業再構築(関数の移転)の実施
- ドイツ内の子会社が継続的に損失を計上している一方で、企業グループ全体は利益を上げている
- 関連当事者への借入金の利率が市場利率の範囲外である
- 低税率国への知的財産ロイヤリティ支払い
- 国別報告データが示すドイツでの収益性の低さ(当該企業の機能や負担するリスクと比較して)
- 業界規範を超える管理費の控除
このツールの使用方法
本ツールは、ドイツでの移転価格設定がOEED基準およびドイツ法に準拠しているかを評価するために設計されている。以下の手順に従う:
- 対象取引を特定する:売却、ロイヤリティ支払い、管理費請求、ローン利息など、調査対象となる国境を越えた関連当事者間取引を明らかにする
- テスト対象者を選定する:最も単純な機能を持つ関連当事者(通常は限定的リスク流通業者または契約製造業者)を特定する
- 比較可能企業データを取得する:Amadeus、Orbis、または局所的な公開財務情報から、テスト対象者に類似した独立企業のデータを収集する
- 利益水準指標(PLI)を選定する:営業利益率、純利益率、またはその他の適切な利益指標を選択する
- 四分位範囲を計算する:このツール内で比較可能企業データを入力し、第25パーセンタイル、中央値、第75パーセンタイルを算出する
- テスト対象者のPLIと比較する:テスト対象者の利益指標が四分位範囲内に収まるかどうかを判定する。範囲内であれば、アームズレングス価格として受け入れられるリスクは低い