2つの確認方法の使い分け

監基報505は、確認方法の選択が監査リスクと重要性の評価に基づくことを求めている。肯定的確認は回答によって証拠が成立する。監査人が「貴社の売掛金残高は100万円である」と文書で被監査会社に送付し、回答があればそれが直接的な証拠となる。否定的確認は回答がないことで証拠とする。「記載と相違がなければ返信不要」という形式で、返信がなければ監査人はそれを承認の証拠と扱う。
この差異は重大である。監基報505.12は肯定的確認を標準的な方法として位置付けている。特に、売掛金の存在性に対する監査証拠が不足している場合、肯定的確認を選択すべきである。否定的確認は監基報505.15の条件を満たす場合のみ使用可能である。その条件は4つ。(1) リスク評価が低いこと、(2) 多数の小額項目であること、(3) 回答者が信頼できること、(4) リスク要因が特にないこと。これら4つが揃わなければ、肯定的確認を選択すべきである。
オランダの事務所がフランス子会社の売掛金確認を実施する場面を考えてみよう。被監査会社の顧客リストには300の小口得意先がいる。各々の売掛金残高は平均5,000ユーロ。リスク評価は低い。この場合、否定的確認は許容される。返信不要形式で300の顧客に送付し、返信がなければ監査証拠としてカウントできる。
一方、同じ状況でも顧客数が10社に絞られ、各々50万ユーロの売掛金を持つとしたら、肯定的確認が必須である。大額項目では回答率が低下するリスクが高く、否定的確認では十分な証拠が得られない可能性がある。実際、回答率が50%を下回る場合、否定的確認の有効性は大きく減損する。

確認方法の選択が監査リスク評価に与える影響

監基報505はA15項で「確認の有効性は、確認する項目のリスク特性による」と述べている。リスク評価が高い項目には肯定的確認を、低い項目には否定的確認を使う原則は、監査効率と証拠強度のバランスに基づいている。
肯定的確認の強みは、被監査会社が存在しない売掛金を架空計上しようとしても、顧客からの直接回答により検出される確率が高いことにある。顧客が「当社にはそのような債務がない」と答えれば、架空計上の可能性が明らかになる。監査人はその差異を詳しく調査し、計上の根拠を検証する。
否定的確認の弱みは、非回答を沈黙の承認と解釈する点である。顧客が返信を忘れていても、監査人はそれを承認と見なす。また、顧客が回答を監査人でなく被監査会社に直接送ることがあれば、回答の真正性が損なわれる。監基報505.13はこれを指摘し、確認の送付と回答受領を監査人が直接管理すべきと求めている。

実務例:ベルギー企業による両方法の適用

シャルルロワ所在のパッカーズ・インターナショナルB.V.は、2024年度の売掛金残高が280万ユーロである。得意先は50社。うち10社が全体の70%を占める。
監査人はまずリスク評価を行う。過去3年間に売掛金の不正計上はない。顧客との取引歴も長く、信用度は高い。
ステップ1:高リスク項目の特定
売上高の70%に対応する10社を特定する。これらは肯定的確認の対象。
文書化ノート:監基報505.12に基づき、高リスク項目は肯定的確認で実施と記録。
ステップ2:肯定的確認の実施
各10社に「貴社の当社に対する債務残高は以下の通り確認いただきたく…」という文書を送付する。各取引額は15万ユーロから35万ユーロ。回答期限を2週間と設定。
現物:9社から回答。1社からは回答なし。その1社の売掛金は20万ユーロ。
文書化ノート:回答率は90%。未回答の顧客には催促メールを送付。2回目催促後、その顧客からの回答を入手。差異なし。
ステップ3:低リスク項目の評価
残りの40社。各々の売掛金は平均5万ユーロ。取引頻度は低いが、顧客基盤は安定している。リスク評価は低い。この層には否定的確認を使用する。
文書化ノート:否定的確認。監基報505.15の4要件(低リスク、小額多数、顧客信頼可、リスク要因なし)を全て確認。別ファイルに記録。
ステップ4:結論
肯定的確認で70%のリスク領域をカバーし、否定的確認で残りをカバー。全体で売掛金の実在性は十分に実証された。監査人の意見は変更なし。

監査人が犯す誤りと検査指摘

第1段階:否定的確認の誤用


オランダ経済監視庁(AFM)の検査報告書(2023年度)では、売掛金確認における方法選択の誤りが報告されている。具体的には、リスク評価が「中程度」である案件で否定的確認を選択したケースが挙げられている。否定的確認は監基報505.15で「リスク評価が低い」ことを前提としている。中程度以上のリスク評価では肯定的確認が必須である。

第2段階:回答率の問題軽視


否定的確認を選択した場合、回答率が30%以下に落ち込むことがある。監査人がこれを無視して「回答がなかった = 承認」と記録するのは監基報505の違反である。AFMの指摘では、回答率が50%を下回る場合、否定的確認の有効性は「著しく減損する」と明記されている。回答率が低い場合、監査人は補完的な監査手続(例えば、銀行確認や売上後事象の検証)を追加実施すべきである。

第3段階:確認の管理不備


否定的確認では、被監査会社が確認票を顧客に送付し、顧客の回答を被監査会社が受け取ることがある。監基報505.13はこれを禁止している。確認の送付と回答受領は監査人が直接管理しなければならない。FRCの検査報告書(2024年)では、このプロセス不備により、顧客の回答の真正性が検証されなかったケースが報告されている。被監査会社が顧客に「返信不要」と伝えていたにもかかわらず、確認手続の有効性が仮定されていた。

肯定的確認と否定的確認の選択が実務に与える影響

監査手続計画の段階で、この2つの方法を区別することは、監査時間と監査証拠の強度に直結する。肯定的確認は1件当たりの手続時間が長い。回答を待つ期間も長い。一方、否定的確認は効率的である。返信不要形式なら、返信を待つ必要がない。しかし、この効率性は、リスク評価が本当に低い場合にのみ正当化される。
売掛金が重要性の基準値を大幅に超える案件では、肯定的確認を選択すべきである。重要性の基準値が200万ユーロで、売掛金残高が2,500万ユーロなら、その額の大きさだけで否定的確認は排除される。監基報505.15の「小額多数」という要件と矛盾するからである。
逆に、リスク評価が特に低く、売掛金が大量の小口顧客からなる場合(例えば、小売業の売掛金で、各顧客が5,000ユーロ未満)、否定的確認は適切である。ただし、回答率が期待値(例えば60%以上)を下回った場合、監査人は直ちに補完手続を追加する。AFMはこの監視体制を「継続的な確認」と呼び、監査人に重大な負担を課している。

関連する用語

  • [売掛金の実在性] - 売掛金確認が直接対応する監査目標
  • [監査証拠の強度] - 肯定的確認と否定的確認の選択に影響する判断基準
  • [リスク評価] - 確認方法の選択を決める主要な要因
  • [回答率] - 否定的確認の有効性を左右する実務的指標
  • [監査手続の信頼性] - 確認の送付・受領プロセスが与える影響

計算機またはツールの利用

肯定的確認と否定的確認の選択を支援するISA 505チェックリストがciferi.comで利用可能である。売掛金のリスク評価、顧客数、平均残高額を入力すると、推奨される確認方法が自動表示される。また、回答率の低下に応じて必要な補完手続も提示される。

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