重要なポイント

  • 86はすべてのグループ内残高・取引・未実現利益の全額消去を要求しており、子会社の持分割合は問わない
  • 不完全な消去は最も多い連結エラーであり、特にグループ内貸付、経営管理料、棚卸資産マージンで発生する
  • グループ内棚卸資産販売の未実現利益は売手側のマージンから消去され、 に基づく繰延税金調整が生じる

仕組み

IFRS 10.B86は、親会社に対しグループ内の資産・負債・資本・収益・費用・キャッシュフローのすべてを全額消去するよう義務づけています。目的は明確で、連結財務諸表にはグループ外部との取引のみを表示するという点にあります。たとえば子会社が別の子会社にEUR 5Mで商品を販売した場合、その売上と対応する仕入は連結上消去されます。棚卸資産自体は残りますが、振替価格ではなくグループにとっての原価で計上する必要がある。期末時点で未販売の棚卸資産に含まれるマージンは、IFRS 10.B86(c)が消去を求める未実現利益に該当します。

消去の対象は売上・売上原価にとどまりません。グループ内貸付、利息、配当、経営管理料、債権債務の相殺もすべて対象となる。ISA 600.40(b)は、グループ監査チームに対し連結調整が網羅的かつ適切であるかを評価するよう求めています。実務上は、経営者がグループ内照合プロセスを適切に運用しているか、不一致が消去仕訳の計上前にすべて調査されているかが、監査の中心的な作業となります。

実務例:Henriksen Shipping A/S

クライアント:デンマークの海上物流会社、FY2025、売上高EUR 140M、IFRS適用。Henriksenは、Henriksen Chartering B.V.(オランダ、売上EUR 32M)を100%、Henriksen Port Services GmbH(ドイツ、売上EUR 18M)を80%保有。グループ監査チームは2025年12月31日時点の連結消去を検証します。

ステップ1:グループ内取引と残高の特定

Henriksen Charteringは親会社にEUR 6.2Mの船舶用船サービスを請求。Henriksen Port Servicesは親会社にEUR 2.8Mの港湾取扱手数料を請求。親会社は両子会社に合計EUR 1.5Mの経営管理料を賦課。期末時点で親会社にはHenriksen Charteringに対するEUR 1.1Mの債権があり、同社にはEUR 1.1Mの債務が計上されている。親会社はHenriksen Port ServicesにEUR 4Mのグループ内貸付(利率4.5%、利息収入EUR 180K)も保有しています。

ステップ2:対応する残高の消去

親会社のEUR 1.1M債権とHenriksen CharteringのEUR 1.1M債務は相殺消去。EUR 4Mのグループ内貸付も同様です。未収利息EUR 180K(親会社の収益)とEUR 180K(子会社の費用)も消去対象となる。

ステップ3:グループ内収益・費用の消去

Henriksen CharteringのEUR 6.2M用船収益と親会社のEUR 6.2M用船費用は相殺される。EUR 2.8Mの港湾手数料とEUR 1.5Mの経営管理料も同様に処理。消去対象となる収益の合計はEUR 10.5Mです。

ステップ4:棚卸資産に含まれる未実現利益の消去

Henriksen Charteringは2025年Q4にHenriksen Port ServicesへEUR 800Kで船舶用スペアパーツを販売。Henriksen Charteringの原価はEUR 600Kで、マージンはEUR 200K。12月31日時点でHenriksen Port Servicesはこのうちの棚卸資産EUR 500K(グループにとっての原価EUR 375K)を保有。未販売棚卸資産に含まれる未実現利益はEUR 125K(EUR 500K − EUR 375K)となる。この金額は連結棚卸資産と連結利益から消去されます。ドイツの法人税率30%を適用すると、IAS 12に基づく繰延税金資産EUR 37.5Kが計上される。

文書化ノート:グループはグループ内収益・費用EUR 10.5M、対応する残高EUR 5.1M、未実現棚卸資産利益EUR 125K(繰延税金資産EUR 37.5K)を消去し、外部取引のみを反映した連結財務諸表を作成。

よくある誤解

  • 不完全なグループ内照合 子会社の元帳でグループ内取引の計上期間がずれる(一方は12月に収益計上、相手方は1月に費用計上)と、報告日に金額が一致しない。IFRS 10.B86は全額消去を要求しており、タイミングの不一致による部分消去は収益と利益の両方を歪める。ISA 600.40(b)は消去仕訳の計上前にこのような時期差異が対処されているかの評価を求めている。
  • 棚卸資産・固定資産の未実現利益の見落とし チームはグループ内収益・費用を消去しても、グループ内で移転した棚卸資産や固定資産の未実現利益を見落とすことが多い。IFRS 10.B86(c)は、棚卸資産や有形固定資産等の資産に認識されたグループ内取引損益の消去を明示的に要求している。
  • 連結調整との混同 実務者は連結消去と連結調整を同義語として扱うことがある。消去スケジュールが完成しても、のれんの減損テスト、非支配持分の測定、会計方針の統一といった非消去調整の評価がISA 600に基づき別途必要である。
  • NCI保有でも全額消去が必要 IFRS 10.B86は、子会社の持分割合にかかわらずグループ内取引の全額消去を要求している。NCIの持分に対応する利益配分は消去後に計算される。80%子会社であっても、消去額を按分する必要はない。

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