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監基報505が求める外部確認の要件

監基報505.6は外部確認を「監査人が直接第三者から監査証拠を入手する監査手続」と定義する。ここで重要なのは「直接」という語。監査人がクライアントを介さずに確認を取ることで、証拠力を高める仕組み。
外部確認の実施を決める際、監基報505.7が3つの要素の評価を求める:
監基報505.A6は具体的な適用場面を示している。売掛金、借入金、銀行預金は外部確認が有効とされる典型例。ただし「常に必要」ではない。リスクが低く、他の手続で十分な証拠が得られるなら省略できる。

実施しない場合の理由付け


監基報505.8は、外部確認を実施しない場合の文書化を求める。単に「内部統制が有効だから」「実証手続を拡充したから」では不十分。以下の3要素すべてに言及する必要がある:

  • 評価対象となるリスク - 固有リスク、統制リスク の水準
  • 他の監査手続による証拠の十分性と適切性 - 実証手続の組合せ効果
  • 外部確認手続により入手する監査証拠の質 - 確認先の性格、依頼内容の具体性
  • なぜそのリスクに対して外部確認が有効でないと判断したか
  • 実施する他の監査手続がなぜそのリスクに対して適切な証拠を提供するか
  • 外部確認を実施しない判断に関連するリスク評価

確認依頼書の設計と送付管理

確認依頼書の形式選択


監基報505.A14は2つの確認形式を区別する:
積極的確認:確認先に確認事項への回答を求める形式。残高が正しいかどうか、記載内容を確認するかどうかを明示的に問う。
消極的確認:記載内容に誤りがある場合のみ回答を求める形式。「記載の残高に相違がある場合のみご連絡ください」という表現を使う。
監基報505.A15によれば、積極的確認の方が証拠力は高い。回答がない場合は確認が取れていないことが明確だから。消極的確認は、回答がない場合に合意とみなすか、単に無関心なのかを区別できない。

送付時期と管理


監基報505.A19は期末日現在の残高確認を原則とする。ただし期中に実施し、期末までの変動をテストすることも許容される。期中実施の場合、以下の要件を満たす:
確認依頼書の送付と管理は監査人が行う。監基報505.A20が明確に述べる通り、被監査会社に送付業務を委ねてはいけない。確認の独立性が損なわれる。

  • 期中から期末までの期間が合理的に短い
  • 期中確認時点と期末の間の取引をテストする
  • 対象となる勘定科目の統制リスクが低い
  • 確認依頼書の送付前にクライアント担当者がドラフトを確認する際、ISA 505.A6に従い回答が監査人に直接返送される旨の明記が維持されていることを確認する手続

回答の評価と信頼性判断

回答の検証手続


監基報505.14は確認回答の信頼性評価を求める。回答が得られても、その内容を検証せずに受け入れてはいけない。
監基報505.A26が示す検証要素:

例外事項への対応


確認回答で差異が判明した場合の処理が監基報505.15。差異の性質を調査し、虚偽表示の可能性を評価する。
調査の手順:

  • 回答者の適格性:回答者が確認事項を知る立場にあるか
  • 回答の具体性:単なる同意だけでなく、具体的な内容が示されているか
  • 回答の一貫性:会計記録や他の監査証拠と整合するか
  • 差異の原因を特定(タイミング差異、記録誤り、不正)
  • 類似する虚偽表示が他にもないか検討
  • 必要に応じて確認手続の範囲を拡大

代替手続の設計と実施

積極的確認に対する代替手続


監基報505.16は、積極的確認に回答が得られない場合の代替手続を求める。消極的確認は、回答がないこと自体が一定の証拠価値を持つため、代替手続は不要とされる場合が多い。
売掛金の代替手続として監基報505.A31が例示:

代替手続の十分性判断


代替手続が外部確認と同等の証拠力を持つかは慎重に判断する。監基報505.A32は、代替手続の証拠力が外部確認に匹敵する場合の条件を示す:

  • 入金テスト:期末日後の入金記録と売掛金残高の照合
  • 出荷書類の査閲:出荷伝票、請求書の存在確認
  • 期末日前後のカットオフテスト:売上計上時期の適切性確認
  • 複数の異なる性質の手続を組み合わせる
  • 独立した情報源から入手した証拠を含む
  • 確認しようとした財務諸表上の主張に直接関連する

実務例:製造業の売掛金確認プロセス

> 設例:中部精密工業株式会社

業種:自動車部品製造
売上高:85億円
売掛金残高:12億円(期末日現在)
主要取引先:大手自動車メーカー10社で全体の80%
期末日:2024年3月31日

ステップ1:確認先の選定


文書化:選定基準とカバー率を調書に記載

ステップ2:確認形式の決定


文書化:確認形式選択の理由(リスク評価結果との関連)

ステップ3:確認依頼書の送付


文書化:送付日、送付先リスト、送付方法

ステップ4:回答の集計と評価


文書化:回答状況、差異の内容と調査結果

ステップ5:代替手続の実施


回答のない積極的確認6社(残高合計8,000万円)について:
結果:代替手続により残高800万円(10%)について十分な監査証拠を入手
文書化:実施した代替手続の内容、入手した証拠の性質

ステップ6:結論

  • 売掛金残高を金額順にソート
  • 上位10社で残高の78%をカバーすることを確認
  • 残りから無作為に8社を追加選定
  • 確認対象:18社、カバー率85%
  • 主要取引先10社:積極的確認(残高金額を記載して確認依頼)
  • その他8社:積極的確認(同上)
  • 小口先50社:消極的確認(相違がある場合のみ回答依頼)
  • 2024年4月8日:確認依頼書68通を監査人が直接送付
  • 返信期限:4月25日
  • 送付時の注意:被監査会社の社印は使用、署名は監査責任者
  • 2024年4月25日時点の回答状況:
  • 積極的確認18社中12社回答(回答率67%)
  • 消極的確認50社中3社回答(差異通知)
  • 差異分析:
  • A社:期末日後入金500万円のタイミング差異
  • B社:返品100万円の記録もれ
  • 入金テスト:4月30日までの入金7,200万円を確認
  • 出荷書類査閲:3月の出荷伝票と請求書の存在を確認
  • カットオフテスト:3月末前後1週間の売上計上時期を検証
  • 外部確認と代替手続により売掛金残高の95%について適切な証拠を入手
  • 未検証残高は重要性の基準値(2,400万円)を下回る
  • 売掛金の実在性に関する主張について合理的な心証を形成

実践チェックリスト

以下のチェックリストは明日の業務で使用できる:

  • 確認先選定時:金額的重要性とリスクの両方を考慮して選定したか。単純に金額順だけで決めていないか。(監基報505.A11)
  • 確認依頼書設計時:確認事項が具体的で、回答者にとって明確か。曖昧な表現(「適切に処理されているか」等)を避けているか。(監基報505.A13)
  • 送付管理時:監査人が直接送付し、返信も監査人宛てに設定しているか。被監査会社を経由する仕組みになっていないか。(監基報505.A20)
  • 回答評価時:回答内容を他の監査証拠と照合して信頼性を確認したか。単純に「同意」とだけ記載された回答を受け入れていないか。(監基報505.A26)
  • 代替手続設計時:外部確認で確認しようとした主張(実在性、網羅性、評価)に直接関連する証拠を入手する手続になっているか。(監基報505.A32)
  • 最重要:外部確認を実施しない場合、3要素(リスク評価、他の手続の適切性、外部確認の有効性評価)すべてを理由付けして文書化したか。

よくある指摘事項

以下は金融庁検査で実際に指摘された事例:

  • 確認手続の理由付け不備:「重要な取引先だから確認した」という記載のみで、リスク評価との関連が不明
  • 代替手続の証拠力不足:入金テストのみで売掛金の実在性を確認したと結論付け、出荷書類等の査閲を省略

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