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医療事業の監査では、患者数動向、診療単価、医療従事者の配置と給与、医療材料原価などの操作的データと財務諸表数値の関係を理解することが重要である。監査基準報告書520は、分析的実証手続の対象となるアサーションについて十分な精度を持った推定を行い、計上金額と推定値の差異を調査することを求めている。医療事業の...
医療事業における監査基準報告書520に基づく分析的手続
医療事業の監査では、患者数動向、診療単価、医療従事者の配置と給与、医療材料原価などの操作的データと財務諸表数値の関係を理解することが重要である。監査基準報告書520は、分析的実証手続の対象となるアサーションについて十分な精度を持った推定を行い、計上金額と推定値の差異を調査することを求めている。医療事業の場合、これは患者数あたりの平均診療収入、診療科別の診療単価、医療材料原価率、稼働病床数といった主要指標の変化を監視することを意味する。
医療事業における最重要の分析的指標は営業利益率である。医療提供体制の変化(新規診療科の開設、病床数の増減、医師配置の変更)は、即座に患者数、診療単価、運営費に影響を与える。患者数が10%増加したにもかかわらず診療収入が5%しか増加していない場合、診療単価の低下を示唆している。これは診療科別構成の変化、患者層の変化(保険診療と自費診療の比率変化)、または単価交渉の失敗を示唆する。金額が大きい場合、この差異は監査基準報告書520.6に基づく調査を要する。
医療事業における主要比率と指標
患者単位あたりの平均診療収入(ARPU)が第1の指標である。これを計算するには、総診療収入を延べ患者数で除する。単位:円/患者。年度間の変化は診療単価の低下または上昇を示す。同時に診療科別の患者構成の変化を検証することで、単価低下が診療科ミックスの悪化によるのか、それとも既存診療科の単価低下によるのかが明確になる。
病床稼働率(実占有床日数÷利用可能床日数)は、運営効率を示す。年度間で大幅な低下があれば、患者需要の減少、競合施設の影響、または医師配置の問題が考えられる。稼働率が90%を超える場合、追加の患者需要に応じられず、診療収入の成長が天井に達している可能性がある。
医療従事者の給与費比率(総給与費÷診療収入)は、通常、医療事業では40~50%の範囲にある。この比率の急激な上昇は、医師・看護師の採用増加、昇給、または診療収入の不振を示唆する。給与費が変わらないのに診療収入が低下すれば、給与費比率は上昇する。逆に給与費が増加しても診療収入が増加すれば、比率は安定する可能性がある。
医療材料原価率(医療材料費÷診療収入)は、医療提供の内容に依存する。手術件数の多い施設では材料費が高くなる。診療内容の変化(低侵襲手術の導入、高額医療機器の導入)により、単位あたりの材料費が上昇することがある。
医療事業の動きを理由づけるもの
医療収入の変化は次の要因に左右される。(1) 患者数の変化(人口動態、診療圏内の競合、マーケティング効果)、(2) 診療単価の変化(診療科ミックス、保険診療と自費診療の比率、価格交渉)、(3) 稼働率の変化(新規施設の立ち上げ、既存施設の拡張、医師配置の変更)。
医療従事者コストは、採用・昇給サイクル、労働時間規制への対応、非常勤医師の割合に影響される。2024年の医師働き方改革対応では、当直手当の増加、労働時間短縮に伴う非常勤医師採用が多くの医療施設で報告されている。給与費の急上昇は、この改革への対応を理由として説明されることが多い。
医療材料の原価は、採用医療機器の変化、手術件数の推移、供給業者との契約条件に左右される。新規医療機器の導入は、初期段階では単位あたりのコストを上昇させることがある。使用件数が増加するに伴い、定額契約や使用実績ベースの割引によって、単位あたりのコストが低下する。
診療報酬改定は2年ごとに行われ、基本診療料、特定入院料などが変動する。改定実施月(通常4月)の分析では、改定前後での診療科別の影響を検証する必要がある。改定により利益率が上昇する診療科と低下する診療科がある。
実例の詳細:地域中核病院
東海県岡崎市に所在する150床の医療法人財団「桜井医療事業団」。重要性850万円、実績重要性550万円。調査対象比率10%、絶対金額550万円。患者単位あたりの診療単価、給与費比率、医療材料原価率を重点検証項目とする。
| 勘定科目 | 種別 | 当期 | 前期 |
|---------|------|------|------|
| 診療収入—入院 | 診療収入 | 38,500万円 | 35,200万円 |
| 診療収入—外来 | 診療収入 | 22,800万円 | 21,600万円 |
| 診療収入—検査・画像 | 診療収入 | 8,200万円 | 7,900万円 |
| 医療材料費 | 診療原価 | 12,100万円 | 11,200万円 |
| 医師給与 | 診療原価 | 16,800万円 | 15,500万円 |
| 看護職給与 | 診療原価 | 18,900万円 | 18,200万円 |
| 医療技術職給与 | 診療原価 | 6,200万円 | 5,900万円 |
| 行政職給与 | 運営費 | 3,100万円 | 3,050万円 |
| 医薬品費 | 診療原価 | 4,800万円 | 4,500万円 |
| 施設賃借料 | 運営費 | 2,200万円 | 2,200万円 |
| 支払利息 | 運営費 | 1,900万円 | 2,050万円 |
差異の説明
入院診療収入:9,300万円増(26.4%)
これは両方の閾値を超える。経営管理者への質問と病床稼働データの検証。当期初に医師1名を新規採用し、整形外科の入院患者が28%増加したことを確認。かつ診療報酬改定(4月実施)により整形外科関連の診療料が6%上昇。新規医師のオンボーディング期間を考慮し、患者数増加と診療料改定による増収と整合性あり。前期の開始時点での医師配置の不十分さが後発的に病床稼働率の低さ(68%)で示されており、当期の医師採用により稼働率が84%に改善された。
医療材料費:900万円増(8.0%)
これは比率閾値に接近。診療科別の手術件数と新規医療機器導入の確認。手術件数は1.8%の増加に留まるが、新規の血管造影装置導入に伴う高額な造影剤・カテーテル使用が月額80万円のコスト増をもたらした。通期では約960万円の増加要因となるが、新規装置の利用件数が予想より30%低かった(供給業者と使用件数ベースの契約のため単価が想定より高かった)。是正方策として、供給業者との契約交渉を提案。
医師給与:1,300万円増(8.4%)
医師1名採用(年間給与約900万円)と医師働き方改革対応による当直手当の増加(約450万円)を確認。新規採用医師の勤務開始は4月。当期10か月間の給与支出は想定額と一致。働き方改革への対応コストは業界全体で報告されており、根拠のある増加。