スコープ3排出量推定ツール:製造業 | ciferi

本ツールは、製造業企業向けにカスタマイズされたスコープ3排出量推定機能を提供します。業界特有の閾値、在庫・仕掛品比率の監視、および生産環境における粗利益率トレンド分析に対応しています。 監基報3410(あるいは監査基準報告書3410)に準拠した分析的レビュー手続として、または統合報告書・サステナビリティ...

ツール概要

本ツールは、製造業企業向けにカスタマイズされたスコープ3排出量推定機能を提供します。業界特有の閾値、在庫・仕掛品比率の監視、および生産環境における粗利益率トレンド分析に対応しています。
監基報3410(あるいは監査基準報告書3410)に準拠した分析的レビュー手続として、または統合報告書・サステナビリティレポートの検証作業の一環として使用できます。金融庁および日本公認会計士協会(JICPA)の監督下で、日本企業のスコープ3排出量開示が急速に拡大しています。本ツールは、企業が排出量を見積もり、監査人が根拠を検証する際の実務的な基盤を提供します。

日本の規制環境

規制動向と企業報告義務


日本では、スコープ3排出量の報告に対する規制要件が複数のレイヤーで重なっています。
金融庁とサステナビリティ基準
金融庁は、国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)のIFRS S2気候関連開示基準に準拠した日本版基準の検討を進めています。有価証券報告書への組み込みに向けて、プライム市場上場企業に対するスコープ3開示の期待が高まっています。スコープ1・2のみならず、スコープ3の排出量データは、気候関連財務リスク(TCFD推奨)の開示において投資家から要求される情報です。
GHPプロトコルとの関連
企業が任意で取り組む温室効果ガス(GHG)プロトコルのスコープ3カテゴリー15項目は、単なる自発的なサステナビリティ報告に止まりません。金融機関、大手製造業、エネルギー企業のサプライチェーンパートナーは、顧客企業のスコープ3カテゴリー1(購入した商品・サービス)排出量の算定に必要なデータを提供することが、取引継続の条件となりつつあります。
日本における排出係数ソース
環境省は、国家温室効果ガスインベントリの作成を通じて、日本固有の排出係数を公表しています。特に、電力グリッド排出係数(2023年度実績:地域別に0.489~0.691 kg CO₂e/kWh)は、日本国内の購入電力に関連するスコープ2および上流スコープ3の計算に用いられます。同様に、モーダル別輸送排出係数(トラック、鉄道、海運、航空)は国土交通省が整備しています。

製造業特有の課題


日本の製造業は、とりわけ自動車産業、電子機器、化学品製造において、スコープ3カテゴリー1(原材料・部品調達)と9(販売製品の輸送)の排出量が極めて大きいことが特徴です。株式会社東海機械製作所(年売上180億円、従業員850名)のような中堅製造企業であっても、中国・東南アジアからの部品調達が売上原価の40~50%を占める場合、スコープ3カテゴリー1だけで数万トンのCO₂e相当の排出量が生じています。
金融庁が上場企業の気候関連開示レビューで指摘したのは、スコープ3排出量を報告していながら、どのカテゴリーが含まれ、どのカテゴリーが除外されたか、また排出係数のデータソースは何かを明記していない企業が約3割に上るという点です。監査人の立場からは、報告企業がこうした基本的な選別と出典明記を怠っていることが、内部統制の弱点として現れます。

本ツールの設計と使用方法

基本構成


本ツールは15のスコープ3カテゴリーを網羅し、各カテゴリーに対して複数の入力方式を提供します。
カテゴリー1:購入した商品・サービス
カテゴリー3:燃料・エネルギー関連活動
カテゴリー4・9:輸送・流通
カテゴリー5・12:廃棄物処理
カテゴリー6・7:従業員移動(出張・通勤)

計算の流れ

  • 入力方式:支出ベース(金額入力)または活動ベース(数量・金額の詳細入力)
  • デフォルト排出係数:0.42 kg CO₂e/€(EXIOBASE多部門平均)
  • 日本企業の場合、円建てで入力し、ユーロ換算レート1.00(円建てのまま推定)を使用するか、現在レートで換算してください
  • 入力方式:電力量ベース(kWh入力)
  • 排出係数:0.025 kg CO₂e/kWh(上流および送電損失、2024年度参考)
  • 日本の場合、購入電力の上流排出(採掘・輸送)と地域内送電損失が対象
  • 入力方式:トンキロメートル(t-km)ベース
  • 輸送モード別係数:トラック(0.107)、鉄道(0.028)、海運(0.016)、航空(0.602)
  • 日本の場合、多くの部品・製成品は国内トラック輸送と国際海運の組み合わせ。航空輸送は高価値品や季節商品に限定される傾向
  • 入力方式:トン数ベース
  • 処分方法別係数:埋立(586)、焼却(21.3)、リサイクル(21.3)、堆肥化(10.2)
  • 日本の工場では、産業廃棄物は厳格に分類・処理されるため、活動データが比較的正確に入手できるケースが多い
  • 出張:距離(km)ベース。国内短距離(東京~大阪:750 km、0.156 kg CO₂e/人・km)、国際線(東京~バンコク:2,500 km、0.195 kg CO₂e/人・km)、鉄道(0.035)、社用車(0.171)
  • 通勤:従業員数ベース。デフォルト1.28 kg CO₂e/人・営業日(年間230日を標準)。地域別・業態別の通勤手段の違いを反映させるため、編集可能
  • 企業情報入力
  • 企業名、業種(製造業のサブセクター:自動車部品、電子機器、化学品等)
  • 報告期間(例:2024年4月1日~2025年3月31日)
  • 通貨(日本円、またはグループ統一通貨)
  • スコープ3各カテゴリーの活動データ入力
  • 各カテゴリーについて、利用可能な詳細度に応じて入力
  • 支出ベース、物量ベース、人数ベースのいずれかを選択
  • 排出係数はデフォルト値から調整可能(例:サプライヤー固有の排出データがある場合)
  • 推定排出量の自動計算
  • 活動データ × 排出係数 = 推定排出量(kg CO₂e)
  • 各カテゴリーの小計、スコープ3全体の合計を表示
  • 検証と除外の記録
  • 報告に含まれるカテゴリー、除外するカテゴリー、理由を記録
  • GHGプロトコルの要求に従い、「削除された排出量」として除外カテゴリーと理由を付記
  • 推定値と実測値の混合率を記載
  • ワーキングペーパーへのエクスポート
  • 計算結果を監査調書形式(Excel、PDF)でダウンロード
  • 監基報3410に基づく分析的レビュー手続の根拠資料として活用

設例:製造業企業による実装

事例企業の概要


株式会社関西精密部品製作所(大阪府高槻市、従業員480名)は、自動車部品の精密加工を主業務とする製造業です。年売上は約76億円、営業利益率は約9%で、業界の平均的な規模と収益性を備えています。同社の売上原価は約68億円であり、その内訳は以下の通りです。
親会社は欧州系の大手自動車メーカーであり、グループのスコープ3排出量開示ポリシーに従い、2025年度中に日本国内の主要サプライヤーからスコープ3排出量データの提出を求めています。関西精密部品製作所も対象企業の一社である。

ステップ1:カテゴリー1(購入した商品・サービス)の推定


同社の原材料・部品仕入総額は約33億円(年間)です。
上流排出(カテゴリー1)を算定するため、まず購入先の地域構成を把握します。調査結果:国内仕入35%、中国・台湾仕入40%、東南アジア仕入20%、欧州仕入5%
国内仕入(11.55億円)には国内のEXIOBASEベース排出係数0.42 kg CO₂e/€を適用。ただし日本企業間取引のため、より詳細なデータが存在するか確認します。実際には同社の大手部品メーカー取引先3社が個別の排出係数(0.38~0.45 kg CO₂e/€)を開示していたため、これらを加重平均で使用
海外仕入(21.45億円)については、EXIOBASE多地域版の地域別・産業別係数を参照。中国からの鋼材仕入には0.48 kg CO₂e/€、東南アジアからの部品仕入には0.45 kg CO₂e/€を適用。
カテゴリー1の推定排出量:
カテゴリー1小計:約1万6,100トン CO₂e

ステップ2:カテゴリー4(上流輸送・流通)の推定


原材料・部品の国別調達先から同社への輸送排出量を推定します。
国内仕入35%は主にトラック輸送(平均輸送距離300 km)、中国・台湾仕入40%は海運(平均12,000トン-km)、東南アジア仕入20%は一部航空(高価値品5%)と海運(95%)、欧州仕入5%は主に海運
カテゴリー4小計:約8,540トン CO₂e
上流輸送は購入原価の物理的な移動を反映する。同社の場合、海運の比率が高いため、総カテゴリー4排出量はカテゴリー1の約53%に相当する。

ステップ3:カテゴリー9(下流輸送・流通)の推定


製成品(精密加工部品)を顧客に納入する際の輸送排出量です。同社の主要顧客は国内自動車メーカー・サプライヤー(70%)と海外現地法人への輸出(30%)です。
カテゴリー9小計:約6,840トン CO₂e

ステップ4:カテゴリー6(出張)の推定


同社は営業職60名を含む480名の従業員を有します。出張パターンは以下の通りです。
営業職の国内出張:平均月2回、東京・名古屋等への移動、平均750 km、新幹線利用(約65%)と社用車利用(約35%)
国際出張:営業職中約20%(12名)、年1~2回、平均東南アジア(バンコク、マニラ)、3,000 km、飛行機利用
カテゴリー6小計:約1,000トン CO₂e

ステップ5:カテゴリー7(従業員通勤)の推定


大阪府高槻市に立地する同社の従業員480名の通勤パターンです。地域の公共交通利用が一般的(電車56%)、自動車通勤(44%)、平均通勤距離16 km
デフォルト係数1.28 kg CO₂e/人・営業日を使用、営業日230日で算定します。
ただし、より詳細な地域別係数を適用する場合、電車通勤(56%)の排出係数は低め(0.08 kg CO₂e/人・営業日)、自動車通勤(44%)は高め(0.25 kg CO₂e/人・営業日)となります。
カテゴリー7小計:約1,710トン CO₂e(詳細計算)

スコープ3排出量の統合結果


関西精密部品製作所のスコープ3排出量推定値:
| カテゴリー | 排出量(トンCO₂e) |
|-----------|-----------|
| 1. 購入した商品・サービス | 16,100 |
| 4. 上流輸送・流通 | 8,540 |
| 6. 出張 | 1,000 |
| 7. 従業員通勤 | 1,710 |
| 9. 下流輸送・流通 | 6,840 |
| スコープ3合計 | 34,190 |
この推定値は、カテゴリー2(資本財)、3(燃料・エネルギー関連)、5(廃棄物)、8・13(リース資産)、10・11・12(販売製品の加工・使用・廃棄)、14・15(フランチャイズ・投資)を除外している。これらは当該企業の重要性評価の結果、スコープ3の開示対象外と判定されたものと仮定する。
同社の売上76億円に対して、スコープ3排出原単位は約4.5トンCO₂e/百万円の売上となります。日本の製造業平均(約3.2トン/百万円)と比較すると、輸送集約的な産業構造が反映されています。

  • 原材料仕入(鋼材、アルミニウム合金):売上原価の48%
  • 外注加工・部品仕入:売上原価の22%
  • 労務費:売上原価の18%
  • その他(エネルギー、消耗品):売上原価の12%
  • 国内仕入:11.55億円 × 0.41 kg CO₂e/€ = 約474万 kg CO₂e(4,740トン CO₂e)
  • 中国・台湾仕入:13.12億円 × 0.48 kg CO₂e/€ = 約630万 kg CO₂e(6,300トン CO₂e)
  • 東南アジア仕入:8.33億円 × 0.45 kg CO₂e/€ = 約375万 kg CO₂e(3,750トン CO₂e)
  • 欧州仕入:2.60億円 × 0.42 kg CO₂e/€ = 約109万 kg CO₂e(1,090トン CO₂e)
  • 国内トラック輸送:11.55億円相当の仕入品、平均重量300トン/月、輸送距離300 km
  • トンキロメートル:300トン × 300 km × 12ヶ月 = 108万 t-km
  • 排出係数:0.107 kg CO₂e/t-km
  • 排出量:108万 × 0.107 = 約115万 kg CO₂e(1,150トン CO₂e)
  • 海運(コンテナ、中国・東南アジア・欧州発):総仕入23.05億円相当、年間約4,000 TEU相当の容器、推定15,000トン貨物重量
  • トンキロメートル(平均航海距離12,000 km):15,000トン × 12,000 km = 1.8億 t-km
  • 排出係数:0.016 kg CO₂e/t-km
  • 排出量:1.8億 × 0.016 = 約288万 kg CO₂e(2,880トン CO₂e)
  • 航空輸送(東南アジアからの高価値・緊急調達品5%):1.67億円相当、推定300トン、平均2,500 km
  • トンキロメートル:300トン × 2,500 km = 75万 t-km
  • 排出係数:0.602 kg CO₂e/t-km
  • 排出量:75万 × 0.602 = 約451万 kg CO₂e(4,510トン CO₂e)
  • 国内納入:売上約53.2億円、年間約8,000トン、平均輸送距離350 km
  • トラック輸送:8,000トン × 350 km = 280万 t-km
  • 排出係数:0.107 kg CO₂e/t-km
  • 排出量:280万 × 0.107 = 約300万 kg CO₂e(3,000トン CO₂e)
  • 海外輸出:売上約22.8億円、年間約3,000トン、平均航海距離(北米・欧州向け)8,000 km
  • 海運:3,000トン × 8,000 km = 2,400万 t-km
  • 排出係数:0.016 kg CO₂e/t-km
  • 排出量:2,400万 × 0.016 = 約384万 kg CO₂e(3,840トン CO₂e)
  • 新幹線:60名 × 24回/年 × 750 km × 0.035 kg CO₂e/km = 約378万 kg CO₂e(380トン CO₂e)
  • 社用車:60名 × 8.4回/年 × 750 km × 0.171 kg CO₂e/km = 約511万 kg CO₂e(510トン CO₂e)
  • 短距離国際線(アジア太平洋):12名 × 1.5回/年 × 3,000 km × 0.195 kg CO₂e/km = 約105万 kg CO₂e(105トン CO₂e)
  • 基本推定:480名 × 230日 × 1.28 kg CO₂e = 約141万 kg CO₂e(1,410トン CO₂e)
  • 電車通勤:269名 × 230日 × 0.08 = 約495万 kg CO₂e(495トン CO₂e)
  • 自動車通勤:211名 × 230日 × 0.25 = 約1,213万 kg CO₂e(1,215トン CO₂e)

監査実務での活用方法

分析的レビュー手続への組み込み


監基報520に基づく分析的レビュー手続として、本ツールで推定したスコープ3排出量を以下の方法で検証できます。
前年度データとの比較
同一企業について複数年度のデータを入力し、年度ごとの変動を分析します。売上成長率に対する排出量の増減率が合理的であるか判定します。例えば、売上が10%増加している場合、スコープ3排出量も同等程度の増加が予想されます。増加率が大幅に異なる場合(例:売上10%増、排出量30%増)は、活動内容の変化(生産ミックス、輸送モード、サプライヤー構成の変更等)を確認します。
予算対実績分析
企業の事業計画上の想定排出量と、本ツール推定値の乖離を分析します。特に、目標値の達成状況を検証する際に有効です。
産業ベンチマーク比較
同じ業種・規模の類似企業との排出原単位比較を行います。本ツール内に産業別参考値が組み込まれている場合、それらとの比較により、当該企業の排出効率が同業他社より優位か劣位かを判定できます。

監査人の判断で考慮すべき点


データ品質の層別化
スコープ3排出量は、その構成要素によってデータ品質が大きく異なります。本ツール使用時に、企業から以下の情報を入手し、記録する必要があります。
報告書では、実測データが全排出量の何%を占めるか、推定データの比率は何%かを記載する必要があります(GHGプロトコルおよび国際基準の要求)。監査人は、推定値の比率が過度に高い場合(60%超)、除外カテゴリー、不確実性の大きさについて、報告書内での説明を確認します。
外部排出係数の妥当性検証
本ツールで使用する排出係数(EXIOBASE、DEFRA、環境省データ等)の出典年度・適用地域が、報告対象企業の事業実態と整合しているかを確認します。例えば、中国仕入が大幅に増加した場合、従前の平均係数ではなく、中国の地域別・産業別係数を更新する必要があります。
重要性の判定
スコープ3排出量が企業全体の気候関連情報開示において重要であるか判定します。金融庁の実務ガイドでは、スコープ3排出量がスコープ1・2の合計より大きい場合、原則として重要であると扱われます。また、顧客企業からの開示要求、グループ親会社の報告義務、国際的な投資家期待に鑑み、重要性判定の文脈は業企業の事業モデル次第で大きく異なります。

ワーキングペーパーへの組み込み


本ツールからエクスポートされた計算シート、前提条件、排出係数の出典は、監査調書として以下の要領で整理します。
ファイル名と構成
監査人の署名欄
各シートに監査人名、監査実施日、レビュー日、パートナー確認日を記載します。

  • 実測データ(最高品質):サプライヤーから直接提供されたScope 3排出量、実際の輸送伝票に基づく重量・距離、従業員の実際の出張領収書等。ウエイト:100%信頼度
  • 詳細活動データ(中程度):企業の会計記録から抽出した支出額、運搬会社の統計、給与台帳の従業員数。これらを排出係数と組み合わせた推定値。ウエイト:70~80%信頼度
  • 概括推定(低品質):業界平均係数を支出ベースで適用した値。ウエイト:30~50%信頼度
  • ファイル名例:「スコープ3排出量推定_関西精密部品製作所_2024年度_監査用」
  • シート構成:
  • シート1「サマリー」 → 企業概要、報告期間、スコープ3排出量合計、実測値・推定値の比率
  • シート2「カテゴリー別推定」 → 各カテゴリーごとの活動データ、排出係数、推定排出量
  • シート3「排出係数出典」 → 使用した係数の出典(環境省、EXIOBASE、GHGプロトコル等)、適用時期、地域別対応表
  • シート4「前提条件と仮定」 → 企業が明示的に置いた仮定(地域別調達比率、輸送モード比率等)、除外カテゴリーと理由
  • シート5「監査人の分析」 → 前年度比較、業界ベンチマーク分析、データ品質評価、重要性判定

製造業における重要なスコープ3カテゴリーの解釈

カテゴリー1:購入した商品・サービスの特殊性


製造業企業のスコープ3の大部分(通常は50~70%)はカテゴリー1に集中します。これは、原材料、部品、外注加工サービスが事業の中核だからです。
ただし、同一の「購入」でありながら、その排出源は異なります。
鋼材仕入(原材料)の排出量
100トンの鋼材を中国から仕入する場合、その排出量は:
電子部品仕入(複雑加工品)の排出量
同じ金額100万円の電子部品を台湾から仕入する場合、その排出量は:
同じ「仕入100万円」でも、内容物によって排出量は数倍異なります。したがって、企業が「支出ベース」のみで推定する場合、その仮定を明記し、実物量データ(鋼材トン数、電子部品個数)が入手できた場合の更新計画を述べておく必要があります。

カテゴリー3:燃料・エネルギー関連活動


企業の購入電力に対するスコープ2排出量が確定した後、そのスコープ3相当額(上流排出)をカテゴリー3で計上します。
日本の電力グリッド排出係数(2023年度)は地域によって異なります:
同一企業でも、複数地域に工場を持つ場合、地域別に係数を適用する必要があります。また、購入電力に再生可能エネルギー証書(REC)や再エネメニュー契約がある場合、その比率に応じてスコープ2・3の排出量は低下します。本ツール上でも、企業がREC取得額を入力できる機能があります。

カテゴリー5:廃棄物処理


製造業工場から発生する産業廃棄物(スクラップ、切粉、不良品、梱包材)の処理方法により、排出量が大きく異なります。
金属スクラップの処理
1トンの鋼鉄スクラップの処理排出量:
同じスクラップでも、埋立処分と金属リサイクルでは排出量が30倍異なります。企業のサステナビリティ政策として「廃棄物100%リサイクル」を掲げている場合、スコープ3カテゴリー5の排出量は驚くほど小さくなります。監査人は、この削減が実際の処理契約・実績に基づいているか確認する必要があります。処理業者の契約書、月次処理報告書の確認
  • 鉄鉱石採掘:約1.2トン CO₂e/トン鋼(中国平均)
  • 製錬・転炉プロセス:約2.1トン CO₂e/トン鋼
  • 圧延・仕上げ:約0.4トン CO₂e/トン鋼
  • 小計:約3.7トン CO₂e/トン鋼材 = 370トン CO₂e/100トン購入
  • 半導体製造(ファウンドリプロセス):約15~20トン CO₂e/100万円
  • プリント基板製造:約2~3トン CO₂e/100万円
  • 組立・テスト:約1~2トン CO₂e/100万円
  • 小計:約18~25トン CO₂e/100万円購入
  • 東京電力管内:約0.489 kg CO₂e/kWh
  • 関西電力管内:約0.519 kg CO₂e/kWh
  • 中国電力管内:約0.645 kg CO₂e/kWh
  • 四国電力管内:約0.561 kg CO₂e/kWh
  • 埋立処分:約0.586トン CO₂e(メタンガス発生)
  • 焼却処分:約0.021トン CO₂e(低排出)
  • リサイクル(製鉄所での再溶解):約0.021トン CO₂e

国際的な検査指摘との対照

国際的な傾向


PCAOB(米国公開企業監査委員会)およびFRC(英国金融行為監督機構)が実施した気候関連開示監査のレビュー結果から、以下の共通的な指摘が出ています。

日本国内での実務への応用


金融庁が2024年度に実施した有価証券報告書記載企業のサステナビリティ情報チェックでも、これらと同様の指摘が複数出ています。具体的には、プライム市場上場企業の約32%で、スコープ3開示の詳細さが不十分と指摘されています。
監査人として、被監査会社のスコープ3排出量報告をレビューする際には、以下を確認チェックリストに加えることを推奨します。

  • スコープ3カテゴリーの不完全開示: 企業がスコープ3を開示していながら、15カテゴリー中何個が含まれ、何個が除外されたか明記していないケース(約40%)。監査人は、企業の開示文中に「カテゴリー1、4、6、7、9を含む。カテゴリー2、3、5、8は除外。理由:重要性が低い/データ取得困難」といった明示的な記載を確認すべき。
  • 排出係数ソースの不記載: 企業が推定排出量を報告しながら、どの公表データセット(EXIOBASE、DEFRA、GHGプロトコル、環境省等)から係数を引用したか、出典年度は何か記載していないケース(約30%)。本ツール使用時には、企業の最終報告書に「排出係数出典表」を添付させ、各カテゴリーごとに出典を明記させることが重要。
  • 年度変更に伴う再計算の未実施: 前年度のスコープ3排出量を、当年度の排出係数で再計算(restated)していないケース。例えば、2023年度は2023年度排出係数で360万トン、2024年度は2024年度排出係数で365万トンと開示されているが、2023年度を2024年度係数で再計算すると375万トンになる場合、375万トンとの比較が必要。年度ごとに係数が更新されることは避けられないため、企業は「当年度排出量365万トン(2024年度係数)、前年度比較可能ベース375万トン(同係数で再計算)」と開示する必要があります。
  • スコープ3の「含まれるカテゴリー」と「除外カテゴリー」の明示
  • 除外理由の記載(重要性が低い、データ取得不可、事業に非該当等)
  • 各カテゴリーの排出係数出典と適用時期の記載
  • 実測データの比率と推定データの比率の分別
  • 前年度比較時の係数再計算の有無(あれば再計算方法)
  • 重要な仮定(調達地域別構成、輸送モード比率、廃棄物処分方法等)の記載
  • 不確実性の大きさと、その低減計画の記載

ツールの主要機能

入力フォーム


企業情報セクション
スコープ3各カテゴリー入力
各カテゴリーごとに、以下の入力形式を選択:

計算・分析機能


自動計算と表示
前年度比較
前年度データを入力することで、年度ごとの排出量変動を自動表示。売上成長率、生産量変化、外注先変更等に伴う排出量の変動を分析。
業界ベンチマーク比較
業種別の排出原単位平均値を表示し、当該企業の立置を相対評価。同じ自動車部品製造業でも、企業規模や技術水準により大幅に異なることを示唆。
データ品質スコア
企業が入力した各カテゴリーのデータについて、「実測」「詳細推定」「概括推定」の質的レベルを自動判定し、全体のデータ品質スコア(0~100)を表示。推定値の信頼度合いを数値化。
不確実性分析
各カテゴリーの排出量について、±の不確実性幅を自動計算・表示。例えば「カテゴリー1:1万6,100トン CO₂e(不確実性幅:±15%、1万3,700~1万8,500トン)」。

エクスポート機能


Excel形式
計算シート全体を、監査調書として使用可能な形式でダウンロード。
PDF形式
サマリーレポートを pdf出力。経営陣への報告書、ステークホルダー向け開示資料として活用可能。
CSV形式
データを汎用形式で出力。企業の統合報告書・サステナビリティレポート作成システムへの取り込みが可能。

  • 企業名、業種、報告期間、従業員数、売上高
  • 通貨単位(日本円、または USD/EUR での報告)
  • グループ企業か単独企業かの選択
  • 支出ベース入力: 金額のみ入力(例:カテゴリー1)
  • 入力フィールド:年間購買支出額(円建て)
  • デフォルト排出係数が自動適用
  • 結果:支出額 × 係数 = 推定排出量
  • 物量ベース入力: 実際の活動量を入力(例:カテゴリー4輸送)
  • 輸送モード選択(トラック、鉄道、海運、航空)
  • 物量入力:トン数、トンキロメートル、またはコンテナ個数
  • 係数が自動適用
  • 結果:物量 × 係数 = 推定排出量
  • ハイブリッド入力: 金額 + 地域別構成 + 物量(例:カテゴリー1、詳細版)
  • 国別調達比率の入力(中国XX%、東南アジアXX%等)
  • 各国の排出係数を使い分けた計算
  • 結果:より高精度な推定排出量
  • 従業員数ベース入力: 従業員数 × デフォルト係数(例:カテゴリー7通勤)
  • 従業員数、営業日数を入力
  • 地域別通勤手段の比率入力(オプション)
  • 結果:従業員数 × 営業日数 × 係数 = 推定排出量
  • 各カテゴリーの排出量を自動計算し、グラフ表示
  • スコープ3排出量の構成比を円グラフで表示
  • 売上当たりの排出原単位(トンCO₂e/百万円売上)を自動算出
  • 全カテゴリーの詳細計算
  • 排出係数出典リスト
  • グラフ・チャート(前年度比較、構成比)
  • 監査人用チェックリスト